【スポーツ栄養】持久力アップの食事は「糖質」が効果的!その必要量は?

持久力アップのために欠かせない栄養素といえば、運動中の主なエネルギー源である「糖質」です。運動前後の適切な糖質補給が持久力アップのための重要なポイントとなります。

糖質とは何か

糖質とは、「炭水化物」に分類されている物質の中でも人体で消化吸収が可能で、エネルギー源となるものを指します。糖質は穀類や砂糖類、イモ類や果物に多く含まれています。

同じく炭水化物の一種である「食物繊維」は人体で消化することができない「難消化性成分」でエネルギーにはなりませんが、腸内環境の改善などの生理機能を持つ重要な成分でもあります。

関連ページ:炭水化物(糖質) | 食物繊維

直接のエネルギー源である「ATP」

スポーツだけではなく、日常における生活活動を含む身体運動は、全て筋肉の収縮によって行われています。この際に直接のエネルギー源となるのが「ATP(アデノシン三リン酸)」です。

ATPが分解される時の化学的反応によって産み出されたエネルギーが、全ての身体活動の原動力になります。

エネルギー源として最も重要な「糖質」

エネルギーを産み出す栄養素は3大栄養素である「糖質」「脂質」「タンパク質」です。これらの中で最もエネルギー源として利用されやすいのが糖質です。

まずは糖質がエネルギー(ATP)となる3つの代謝過程について解説していきましょう。

関連ページ:糖質 | 脂質 | タンパク質 | 代謝の仕組み

1:解糖系

糖質はグルコースに分解され、「解糖系」という代謝過程に入りエネルギー(ATP)を産み出します。

解糖系は酸素を必要とせず、素早くエネルギーを産み出すことのできる代謝過程ですが、生じるエネルギー量は多くありません。

関連ページ:糖質 | 糖質の代謝

2:TCAサイクル(クエン酸回路)

また、解糖系ではグルコースからピルビン酸が生じます。このピルビン酸は、酸素がある環境下でアセチルCoAとなります。

その後アセチルCoAはオキサロ酢酸と結合してクエン酸となり、「TCA回路」という代謝過程に入ります。TCA回路は多くのエネルギーを産み出すことができる代謝過程です。

3:電子伝達系

そして最後に、解糖系とTCA回路で放出された水素を利用した「電子伝達系」という代謝過程でエネルギーを生じます。

人は、これら3つの代謝過程によって活動のエネルギーを得ています。

*タンパク質と脂質は、糖質が不足時に利用される(糖新生)

タンパク質

タンパク質と脂質もエネルギーを産み出す栄養素でもあるのですが、糖質が十分でない状況でエネルギーとして利用されます。

タンパク質のエネルギー利用は、体内のタンパク質を分解してアミノ酸の形にするところから始まります。その後アミノ酸はアセチルCoAとなり、グルコースを生じて糖質と同じ代謝過程をたどることになります。

タンパク質は糖質の摂取が少ない時や長時間の運動時など、限られた時にエネルギー源として利用されません。タンパク質のエネルギー利用は、もともとは飢餓に耐えるための生理機能なのです。

体タンパク質、つまり筋肉の分解を招くことにもなりますので、高いパフォーマンスを維持する体作りのためには十分な糖質の摂取が必要となります。

関連ページ:タンパク質の代謝 | 脂質の代謝

脂質

脂質はまず脂肪酸とグリセリンに分解されます。この脂肪酸だけを利用してアセチルCoAを作り出し、同じくTCA回路を辿っていきます。(脂質のβ酸化)

脂質も同様に、血糖値の減少などが生じた際にエネルギーとして活用されることになります。

しかも脂肪酸を利用してアセチルCoAを作り出すβ酸化の過程においては、オキサロ酢酸という物質が必要となります。このオキサロ酢酸は、解糖系で得たピルビン酸を利用して作られるため、脂質をエネルギー源とするためには、おのずと糖質も必要となるという訳なのです。

関連ページ:脂質 | 必須脂肪酸 | 脂質の代謝


これらの理由から、エネルギー源としては糖質が最も重要な栄養素だということが分かりましたでしょうか。

糖質を制限する食事療法の流行から、糖質は敬遠されがちな栄養素ではあるのですが、スポーツのパフォーマンスを向上させるという観点からは必要不可欠な栄養素です。

次回は、糖質をより効率よく摂取するためのポイントを解説します。




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ライフミール栄養士
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編集部

ライフミール所属の栄養士です。 私たちは、「正しく、美味しい食生活」を少しでも多くの方に送って頂けるように、まずは正しい判断基準を持つための基礎的な栄養学に始まり、楽しく興味を持って頂けるようなコンテンツの提供や、専門性の強い研究テーマまで幅広い情報を発信してまいります。