ビタミンA(レチノール)
ビタミンAは脂溶性ビタミンのひとつで、目の健康や、皮膚や粘膜を正常に維持する働きをするビタミンです。 一般的にビタミンAは「レチノール」のことを指し、レチノールは動物性食品に含まれていますが、βカロテンなどの植物性食品に含まれるカロテノイドは、体内(小腸)でビタミンAへと変換されることでビタミンA(プロビタミンAと呼ぶ)として機能します。そのため、動物性植物性食品合わせて、体内でビタミンAとして作用する量を、レチノール当量(μgRAE)として表します。
ビタミンAの種類と性質
ビタミンAにはA1とA2の2種類があり、A1、A2を総称してビタミンAといいます。
A1:レチノール、レチナール、レチノイン酸
A2:3-デヒドロレチノール、3-デヒドロレチナール、3-デヒドロレチノイン酸
しかし体内にあるビタミンAはほとんどレチノールのため、一般的には「ビタミンA=レチノール」として言われています。
また、緑黄色野菜に多く含まれるカロテノイド(中でも、β-カロテン、α-カロテン、γ-カロテンなど)には、分子内にビタミンAが含まれており、体内でビタミンAに変換されることからプロビタミンAと呼ばれます。
視覚機能の維持
目の網膜には明暗を感知する細胞がありますが、その中にロドプシンと言われるレチナールが構成成分である細胞が有ります。このロドプシンの中にある「レチナール」は光を受けると化学変化を起こし、遮られると元に戻るという性質があるため、この刺激により明暗の識別が行われます。
そのため、レチナールが不足すると、目の角膜や粘膜がダメージを受けたり、光を過剰にまぶしく感じるなどの目の不調、暗闇や夜間にものが見えにくくなる夜盲症(鳥目)などが起こる可能性があります。
肌機能の維持
ビタミンAは皮膚や口・鼻・喉・肺・胃・腸などの粘膜の健康維持に欠かせません。
また、皮膚や粘膜は上皮細胞といい、ビタミンAは傷やウイルスや細菌などの感染症から身体を守ってくれる働きがあります。
その他、肌の潤いを保ち乾燥から身を守る働きもありますので、美肌成分として美容にもよく用いられます。
ビタミンAの標準摂取量
成人の場合、男性は850~900μgRAE、女性は650~700μgRAEが理想とされ、上限は共に2700μgRAE。
胎児の発達に必須なであり、妊婦にとっては重要なビタミンであるが過剰摂取は胎児に影響が出る可能性があるので、妊娠初期に付加量はありません。
動物性食品から手軽に摂取できるビタミンではあるが、許容上限量が設けられており、過剰摂取に気を付けなければならず、β-カロテンを多く含む緑黄色野菜から摂取するのが望ましいです。
ビタミンA(レチノール当量)が多く含まれる食材
以下の順で記述します。
- 品名
- 可食部100g当たり(μg)
- 1食の目安
- レチノール当量(μg)
- 鶏レバー
- 14000
- 50g
- 7000
- 豚レバー
- 13000
- 50g
- 6500
- あんきも
- 8300
- 50g
- 4150
- うなぎかば焼き
- 1500
- 80g
- 1200
- 牛レバー
- 1100
- 50g
- 550
- 銀ダラ
- 1100
- 80g
- 880
- 卵黄
- 480
- 1個分(20g)
- 96
- 有塩バター
- 510
- 大さじ1杯(12g)
- 61
- 無塩バター
- 790
- 大さじ1杯(12g)
- 95
- クリーム(乳脂肪)
- 390
- 大さじ1杯(15g)
- 59
- パルメザンチーズ
- 240
- 大さじ1杯(6g)
- 14
ビタミンA(βカロテン)が多く含まれる食材
以下の順で記述します。
- 品名
- 可食部100g当たり(μg)
- 1食当たりの量
- β-カロテン当量(μg)
- レチノール当量(μg)
- モロヘイヤ
- 10000
- 50g
- 5000
- 420
- にんじん
- 8200
- 50g
- 4100
- 340
- 春菊
- 4500
- 50g
- 2250
- 190
- ほうれん草
- 4200
- 50g
- 2100
- 175
- 西洋カボチャ
- 4000
- 50g
- 2000
- 165
- 小松菜
- 3100
- 50g
- 1550
- 130
ビタミンAの過剰摂取
動物性食品に含まれるビタミンAは含有量も多く、吸収率が良いので過剰摂取に気を付けなければなりません。
頭痛、吐き気、脱毛、皮膚の乾燥、骨障害、肝障害、神経過敏などの過剰症が起こることがあります。
妊娠初期に過剰摂取すると胎児の成長に影響が出る事が知られています。また,妊娠中の鉄不足を補うためにレバーを採りがちですが、ビタミンAの含有量がとても多いので注意する必要があります。
一方、主に植物性食品に含まれるβカロテンは体内で必要に応じてビタミンAに変換されるので過剰になる事はありません。緑黄色野菜に多く含まれるので野菜から摂取するのが良いでしょう。
ビタミンAの欠乏症
ビタミンAは健康な人の場合、肝臓で十分に貯蔵されているため不足することはほとんどありませんが、アルコールを大量に摂取すると、貯蔵されているビタミンAが消耗されてしまいます。
もし、ビタミンAが欠乏すると、皮膚や爪、粘膜が乾燥して弱くなるため、免疫力が低下して感染症にかかりやすくなります。
また、網膜にあるロドプシンという物質がビタミンAから作られるため、目の角膜や粘膜がダメージを受けたり、光を過剰にまぶしく感じるなどの目の不調、暗闇や夜間にものが見えにくくなる夜盲症(鳥目)などが起こる可能性があります。
ビタミンAとの食べ合わせ
ビタミンAは脂溶性ビタミンなので油に溶けやすい性質があります。
動物性食品に多く含まれるビタミンA(レチノール)はどのような食べ方でも吸収率が良い。
緑黄色野菜に多いβ-カロテンは吸収率が低いが、油に溶けた状態だと小腸から吸収されやすくなるため、油脂と組み合わせて食べると良い。
(例)
・野菜のバター炒め
・生野菜で食べる場合はマヨネーズやドレッシングをかける など
ビタミンAの関連キーワード
<プロビタミンA>
ビタミンA前駆物質とも言われるように、生体内でビタミンAの必要量に応じて効力を示す物質に変換されるものの総称。
α-カロテン、β-カロテン、γ-カロテン、エキネノン、クリプトキサンチンなどがあり、その中で1番吸収率が良いのが、β-カロテンである。
関連リンク: βカロテン