ビオチン(ビタミンB7)
ビオチンは、ビタミンB群の一種で水溶性ビタミンで、7番目に発見されたことからビタミンB7とも呼ばれます。3大栄養素の代謝に関与し、皮膚や髪の健康と深く関わっている栄養素で、欠乏すると皮膚炎・脱毛・白髪・肌荒れ・結膜炎などを発現します。食事からの摂取する以外にも、腸内細菌によって体内でも合成されるため、通常の食事をしていれば欠乏することはありませんが、ただし生卵の卵白にはアビジンという、ビオチンの吸収を妨げる糖タンパク質があるので長期間食べ続けると、ビオチン欠乏症を起こすので要注意です。

ビオチン(ビタミンB7)の性質と働き
ビオチンはビタミンB群の一種で水溶性です。別名はビタミンBとして7番目に発見されたことからビタミンB7とも呼びます。また、生卵白の大量投与によって皮膚に生じる炎症を防止する因子として発見されたことから、ビタミンH(H はドイツ語で皮膚:Haut)と呼ばれることもあります。
関連リンク: ビタミンB
ビオチンは、ビルビン酸カルボキシラーゼと呼ばれる酵素の機能を補助する補酵素として働きます。
アミノ酸の代謝、脂肪酸の合成、エネルギー代謝など、3大栄養素がエネルギーに変わる際に関与しています。
また、ビオチンは皮膚や髪の健康と深くかかわり、皮膚炎を起こすヒスタミンの産生を抑制すると考えられています。
ビオチン不足によって、カルボキシラーゼの働きが悪くなり、アミノ酸の代謝が悪くなると、皮膚や粘膜、髪の毛などをうまく作る事ができず、肌荒れや脱毛、白髪の増加の原因になります。
ビオチン(ビタミンB7)の食事摂取基準
性別 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
年齢等 | 目安量 (μg/日) | 目安量 (μg/日) |
0〜5ヶ月 | 4 | 4 |
6〜11ヶ月 | 10 | 10 |
1〜2歳 | 20 | 20 |
3〜5歳 | 20 | 20 |
6〜7歳 | 25 | 25 |
8〜9歳 | 30 | 30 |
10〜11歳 | 35 | 35 |
12〜14歳 | 50 | 50 |
15〜17歳 | 50 | 50 |
18〜29歳 | 50 | 50 |
30〜49歳 | 50 | 50 |
50〜69歳 | 50 | 50 |
70歳〜 | 50 | 50 |
妊婦 | - | 50 |
授乳婦 | - | 50 |
成人では男女共に50μg/日が目安量となっています。
腸内細菌によっても作られるので、バランスの良い食事を摂ることで成人の1日当たりの摂取基準を十分に満たすことができると言われています。ただし、詳しくは関連キーワードに記載しますが生卵の卵白には注意してください。
ビオチン(ビタミンB7)が多く含まれる食材
以下の順で記述します。
- 品名
- 可食部(100gあたり/μg)
- 1食あたりの目安重量(g)
- 1食あたりの成分含有量(μg)
- 牛レバー
- 76.1
- 50g
- 38.05
- 鶏レバー
- 232.4
- 50g
- 116.2
- いわし
- 17.1
- 80g
- 13.7
- まいたけ
- 25.2
- 30g
- 7.6
- ブロッコリー
- 9.3
- 50g
- 4.7
- 卵
- 25
- 60g(L1個)
- 13.75
- 卵黄
- 65
- 17g(L1個)
- 11.05
- 卵白
- 7.8
- 38g(L1個)
- 2.96
- 納豆
- 18.2
- 40g
- 7.3
- 落花生
- 92.3
- 30g
- 27.7
ビオチン(ビタミンB7)の過剰摂取
ビオチンは水溶性ビタミンのため、摂り過ぎた場合はすぐに尿として排泄されるため過剰摂取によって健康障害が発現したということは今のところありません。
また食事摂取基準に上限設定がされていない理由としては、十分なデータが得られていないためですが、ビオチン関連代謝異常症の患者に対して、1日あたり200mgのビオチンを大量に経口投与したデータでは、健康障害が発現したという報告はない様です。
ビオチン(ビタミンB7)の欠乏
ビオチンは腸内細菌により合成されるので、通常の食事であれば不足することはほとんどありません。
しかし、生の卵白に含まれる「アビジン」という糖タンパク質が、ビオチンの吸収を阻害することが多くの研究で判明しています。それが長期間続くとビオチン欠乏症が起こります。
また、極端な偏食、抗生物質の長期服用によって腸内細菌のバランスが崩れてもビオチンの欠乏症が起こると考えられます。
欠乏すると、乳酸アシドーシスなどの障害が起きると考えられており、ビオチンが抗炎症物質を生成するためアレルギー症状を緩和する作用があることから、リウマチ、シェーグレン症候群、クローン病などの免疫不全症や、1型・2型の糖尿病にも関与されるとされています。
その他の症状としては、脱毛、白髪、湿疹あるいは炎症など皮膚症状、萎縮性舌炎、食欲不振、むかつき、吐き気、憂鬱感、顔面蒼白、前胸部の痛みなどが報告されています。
ビオチン(ビタミンB7)の食べ合わせ
ビオチンは、亜鉛(牡蠣、牛もも肉、豚レバーなどに多く含まれる)と協力して核酸に補酵素として働きかけタンパク質の合成を促すため、同時に摂ることにより相乗効果で皮膚の細胞を規則正しく健康な状態に保つことができます。
関連リンク: 亜鉛 | タンパク質
生の卵白を長期間たくさん摂るとビオチンの吸収を阻害するため、ビオチンの欠乏症が起こります。そのため、ビオチンの摂取を目的として卵を摂取する場合は卵白は加熱処理をして食べるようにしましょう。
ビオチン(ビタミンB7)の関連キーワード
粉ミルクとビオチン
法的規制等により、保健機能食品以外への添加が認められていないビオチンは粉ミルクに添加することがすることが認められていません。しかし、離乳期以降は離乳食からの摂取も見込まれるので、通常はビオチン欠乏を起す心配はほとんどありません。
生卵と、ビオチン
卵白に含まれる糖タンパク質であるアビジンは、ビオチンと非常に強く結合する性質を持っており、「ビオチン-アビジン結合体」を作ります。そうなってしまった場合、消化管でのビオチンの吸収をできなくなり尿として排出されてしまうためです。
しかしアビジンは加熱処理をすることで、性質が変わりビオチンとの結合をしなくなるという性質も持っています。この声質をうまく使って、加熱して結合しないようにしてから、卵黄と卵白の両方を摂取することをおすすめします。(多く含む食材の表にも載せていますが、卵白はビオチンをさほど含みません。しかしタンパク質を多く含みますので卵白を避けて食べるというより、加熱して両方を摂取するようにしましょう)
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎でアレルギーが原因の場合、体内にアレルゲン が入ると、ヒスタミンが体内に放出されることによってかゆみや皮膚の炎症が起こると言われていますが、ビオチンはヒスタミンの産生を抑える働きがあり、アトピー性皮膚炎の治療に有効だと考えられています。