ビタミンD(カルシフェロール)
ビタミンDは、カルシウムの吸収促進、骨の成長促進、血中のカルシウム濃度の調節をし、骨な丈夫を作る上で必要な栄養素です。特に妊婦の方や、子供には重要なビタミンです。また、ビタミンDは、唯一日光に当たる事で体内でつくられるビタミンで、糖尿病を予防する効果や、インフルエンザ予防にも効果があるとされています。
ビタミンDの働きと性質
ビタミンDには、きのこなど植物性食品に含まれるビタミンD2 (エルゴカルシフェロール)と、魚肉・魚類肝臓に含まれるビタミンD3 (コレカルシフェロール)があり、これらを総称してビタミンDといいます。ビタミンD2、ビタミンD3の体内での働きは同じです。
また、ヒトなどの哺乳動物の皮膚には、プロビタミンD3(プロカルシフェロール)がコレステロール生合成過程の中間体として存在し、紫外線によりプレビタミンD3(プレカルシフェロール)となり、体温の熱異性化によりビタミンD3(カルシフェロール)が生成されます。
このようにビタミンDには、食事摂取と体内合成の2つの方法にて体内に供給されます。
ビタミンDは主に肝臓に蓄えられ、ビタミンD2とD3のいずれの型も肝臓や腎臓で処理(代謝)され、活性型のビタミンDに変換されます。
この活性型ビタミンDは、小腸でのカルシウムやリンの吸収を促進し、血液中のカルシウム濃度を高め、骨の成長促進や丈夫な骨や歯の形成、維持に働きます。
また血中カルシウムの濃度を調整します。血中カルシウムは神経伝達や筋肉の収縮という重要な働きにかかわるため、常に一定に保つ必要があります。そのコントロールを行なうのも活性型ビタミンDの役割です。
ビタミンDの食事摂取基準
性別 | 男性 | 女性 | ||
---|---|---|---|---|
年齢等 | 目安量 (μg/日) | 耐容上限量 (μg/日) | 目安量 (μg/日) | 耐容上限量 (μg/日) |
0〜5ヶ月 | 5.0 | 25 | 5.0 | 25 |
6〜11ヶ月 | 5.0 | 25 | 5.0 | 25 |
1〜2歳 | 2.0 | 20 | 2.0 | 20 |
3〜5歳 | 2.5 | 30 | 2.5 | 30 |
6〜7歳 | 3.0 | 40 | 3.0 | 40 |
8〜9歳 | 3.5 | 40 | 3.5 | 40 |
10〜11歳 | 4.5 | 60 | 4.5 | 60 |
12〜14歳 | 5.5 | 80 | 5.5 | 80 |
15〜17歳 | 6.0 | 90 | 6.0 | 90 |
18〜29歳 | 5.5 | 100 | 5.5 | 100 |
30〜49歳 | 5.5 | 100 | 5.5 | 100 |
50〜69歳 | 5.5 | 100 | 5.5 | 100 |
70歳〜 | 5.5 | 100 | 5.5 | 100 |
妊婦 | - | - | 7.0 | - |
授乳婦 | - | - | 8.0 | - |
成人の場合、男女共に、5.5μg/日が必要とされており、上限は、100μg/日とされています。妊婦7.0μg/日、授乳婦は8.0μg/日が必要とされています。
ビタミンDが多く含まれる食材
以下の順で記述します。
- 品名
- 可食部(100gあたり/μg)
- 1食あたりの目安重量(g)
- 1食あたりの成分含有量(μg)
- あんこう(肝)
- 110
- 50g
- 55
- しらす干し
- 46
- 大匙1杯6g
- 3
- イクラ
- 44
- 大匙1杯17g
- 7
- かわはぎ
- 43
- 70g
- 30
- からすみ
- 33
- 140g
- 46
- しろさけ
- 32
- 80g
- 26
- いかなご(佃煮)
- 23
- 10g
- 2
- からふとます
- 22
- 100g
- 22
- にしん
- 22
- 110g
- 24
- さんま
- 19
- 105g
- 20
- うなぎ
- 18
- 150g
- 27
- たちうお
- 14
- 100g
- 14
- まがれい
- 13
- 250g
- 33
- めざし(焼き)
- 11.1
- 13g
- 1
- まさば
- 11
- 80g
- 9
- まいわし
- 10
- 40g
- 4
- すずき
- 10
- 80g
- 8
- きびなご
- 10
- 7g
- 1
- あゆ(養殖)
- 8
- 50g
- 4
ビタミンDの過剰摂取
ビタミンDは脂溶性で体内に蓄積されるため、過剰症に注意が必要です。
紫外線によって皮膚で産生されるビタミンDについては、調節されているため必要以上のビタミンDは産生されないようにできています。
もし、ビタミンDを過剰に摂取すると、血液中のカルシウム濃度が上昇して高カルシウム血症を招き、身倦怠感や食欲不振、嘔吐、下痢、脱水症状、体重減少などの症状が起こります。
また、血管璧や心筋、肺などにカルシウムが沈着して動脈硬化や腎不全などの臓器障害といったリスクも高まります。
ビタミンDの欠乏
ビタミンDが不足すると、カルシウムの吸収がうまくいかなくなり精神的にイライラしやすくなります。
欠乏症としては、大人の場合には「骨軟化症」、子どもの場合は「くる病」が起こります。骨軟化症、くる病はどちらも背中、胸、足などの骨が変形して曲がってしまう病気です。高齢者や閉経後の女性の骨粗しょう症の原因にもなります。特に妊娠中の方や授乳中の方、乳幼児は欠乏症にならないよう注意が必要です。
また、ビタミンD不足が、生活習慣病との関連が示唆されているが、まだ研究や根拠が不十分な為、まだ基準値は設定されていません。
ビタミンDの食べ合わせ
ビタミンDは脂溶性なので、脂肪を含む食品や油を使うと吸収率が高まります。
ビタミンDの中でも、動物性食品のほうが効率よく吸収されますが、きのこ類でもいため物や揚げ物にすれば吸収率がアップします。また、ごまやピーナッツなどの種子類と一緒に食べることでも吸収率が良くなります。
乳製品と一緒に摂ることでさらに効果を高めることができます。
ビタミンDの関連キーワード
骨粗しょう症
骨粗しょう症は、骨の中がスカスカの状態になり、骨が脆くなる病気です。
ビタミンDが不足するとカルシウムの吸収が悪くなり、骨粗しょう症を起こしやすくなります。
骨粗しょう症は、生命をおびやかす病気ではありませんが、骨粗しょう症による骨折から、要介護状態になる人は少なくありません。特にご高齢の方はご注意ください
くる病(骨軟化症)
くる病(骨軟化症)は成長期に骨のカルシウムが作られず、骨が曲がったり、柔らかくなる骨の病気です。ビタミンD、カルシウム、リンなどの欠乏が主な原因で発症します。栄養不足が主な原因ですので、日本では戦後の報告は少なくなってきていましたが、近年のライフスタイルの変化などにより偏った食生活や、母乳のみで育児をされていた場合などにビタミンD不足となり、徐々にまた増えてきたことで再度注意喚起がされています。
紫外線とビタミンD
ヒトの皮膚にはビタミンD前駆体のプロビタミンD3が存在し、日光の紫外線によってビタミンDに変換されます。
日常生活の中で1日10~20分ほど日光を浴びるとビタミンDの合成に役立ちます。ただし、黒く日焼けするほどの日光浴は逆にビタミンDの合成能力を低下させ、紫外線による害もあるため注意が必要です。
また、日照の少ない生活スタイルや、UV効果の高い化粧品をしている人、高齢者などは、食事からのビタミンD補給が必要となります。