ナイアシン(ニコチン酸・ニコチン酸アミド)
ナイアシンは、ビタミンB群の一種で水溶性ビタミンです。主要な化合物として、ニコチン酸とニコチン酸アミドがあり、それらを総称してナイアシンと呼ばれます。
また、肝臓でトリプトファンという必須アミノ酸からも合成することができます。機能としては、3大栄養素からエネルギーを作り出す時や、ビタミンB1と共にアルコールを分解する際に補酵素として関与し、皮膚や粘膜を正常に保つ役割を果たします。
ナイアシンの働きと性質
ナイアシンは水溶性で、ビタミンB群の一種。 植物性食品ではニコチン酸、動物性食品ではニコチンアミドとして広く存在しており、必須アミノ酸であるトリプトファンからも合成される成分です。 ※ニコチン酸は、タバコに含まれるニコチンという物質に構造が似ていることから名前が付きましたが、ニコチンは神経を興奮させ、血圧を上昇させるため全く異なる成分です。
3大栄養素の代謝に関与
ナイアシンは食品から摂取した糖質、脂質、タンパク質がエネルギーとして代謝される際に、補酵素として働き、皮膚や粘膜の健康維持を助ける効果があります。
体内にナイアシンが吸収されると活性化され、ビタミンB1、B2、B6などと共に、エネルギーを作りだす働きがあります。
アルコールの分解作用
ナイアシンはアルコールや二日酔いの原因となるアセトアルデヒドを分解する際に、補酵素としてとして関与します。 アルコールを大量に飲むと、その量に比例してナイアシンも消費されます。
生活習慣病の予防に有効
血液中のコレステロールや中性脂肪を減らす効能があり、血管を拡張させる作用を持つナイアシンは、血液をサラサラにして、動脈硬化などの生活習慣病予防が期待できる。
ナイアシンの食事摂取基準(mgNE/日)
性別 | 男性 | 女性 | ||||||
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年齢等 | 推定平均 必要量 | 推奨量 | 目安量 (mg) | 耐用 上限量 (mg) |
推定平均 必要量 | 推奨量 | 目安量 (mg) | 耐用 上限量 (mg) |
0〜5ヶ月 | - | - | 2 | - | - | - | 2 | - |
6〜11ヶ月 | - | - | 3 | - | - | - | 3 | - |
1〜2歳 | 5 | 5 | - | 60 (15) |
4 | 5 | - | 60 (15) |
3〜5歳 | 6 | 7 | - | 80 (20) |
6 | 7 | - | 80 (20) |
6〜7歳 | 7 | 9 | - | 100 (30) |
7 | 8 | - | 100 (25) |
8〜9歳 | 9 | 11 | - | 150 (35) |
8 | 10 | - | 150 (35) |
10〜11歳 | 11 | 13 | - | 200 (45) |
10 | 12 | - | 200 (45) |
12〜14歳 | 12 | 15 | - | 250 (60) |
12 | 14 | - | 250 (60) |
15〜17歳 | 14 | 16 | - | 300 (75) |
11 | 13 | - | 250 (65) |
18〜29歳 | 13 | 15 | - | 300 (80) |
9 | 11 | - | 250 (65) |
30〜49歳 | 13 | 15 | - | 350 (85) |
10 | 12 | - | 250 (65) |
50〜69歳 | 12 | 14 | - | 350 (80) |
9 | 11 | - | 250 (65) |
70歳〜 | 11 | 13 | - | 300 (75) |
8 | 10 | - | 250 (60) |
妊婦 (付加量) |
- | - | - | - | - | - | - | - |
授乳婦 (付加量) |
- | - | - | - | +3 | +3 | - | - |
*NE = ナイアシン当量 = ナイアシン + 1/60 トリプトファン *身体活動レベルⅡの推定エネルギー必要量を用いて算定 *ニコチンアミドのmg量、括弧内はニコチン酸のmg量。 |
ナイアシンは、動物性食品から植物性食品まで広く含まれるため、普通の食事をしていれば、不足することはあまりありません。しかし、お酒を飲む人は二日酔いを防ぐ効果があるので、ナイアシンが不足しないようにしましょう。
ナイアシンが多く含まれる食材
以下の順で記述します。
- 品名
- 可食部(100gあたり/mg)
- 1食あたりの目安重量(g)
- 1食あたりの成分含有量(mg)
- 豚レバー
- 14.0
- 50g
- 7.0
- 豚ロース
- 7.3
- 80g
- 5.8
- 鶏ささみ
- 11.0
- 80g
- 8.8
- カツオ
- 19.0
- 80g
- 15.2
- たらこ
- 49.5
- 30g
- 14.9
- 落花生
- 17.0
- 30g
- 5.1
ナイアシンの過剰摂取
通常の食事から過剰になることはほとんどありません。
しかし、薬やサプリメントで一度に100mg以上大量摂取すると、血管が拡張して皮膚が赤くなったり、消化不良やひどい下痢などの胃腸障害、肝臓機能障害などの過剰症がおこることがあります。
ナイアシンの欠乏症
ナイアシンは皮膚や粘膜を正常に保つために欠かせない栄養素であるため、皮膚、粘膜や消化管、神経系に影響が出ます。
軽い症状では、口内炎、口角炎、食欲不振、肌荒れなどが起こります。
さらにナイアシンが不足すると、ペラグラという欠乏症が起こります。
ペラグラは、かつてトリプトファンが少ない、とうもろこしを主食とした地域で多発していましたが、極端に偏った食事をしない限りは心配ありません。
皮膚炎や下痢、さらに悪化すると胃腸障害や精神障害を起こします。
日本ではアルコール中毒者にペラグラの症状が見られることがあります。
ナイアシンの食べ合わせ
ナイアシンは必須アミノ酸であるトリプトファンから合成することができます。
その際、ビタミンB1、B2、B6が必要となるため、これらのビタミンB群と摂取することで、高い効果が期待できます。
レバーやカツオ、ささみなどナイアシン、ビタミンB類共に多く含む食材もあります。
また、ミネラルのクロムと組み合わせて摂取することにより、少量のナイアシンで血糖値やコレステロール値を下げる効果があると言われています。クロムはひじきや青海苔などに多く含まれています。
ナイアシンの関連キーワード
トリプトファン
必須アミノ酸のひとつ。必須アミノ酸は人間の体で合成されないため、食品から摂取する必要があります。
トリプトファンは脳内で神経伝達物質であるセロトニンをつくる原料となります。セロトニンには寝つきを良くする効果や、興奮や不快感を鎮めて精神を安定させる効果があります。
また、集中力や記憶力を高めたり、コレステロール値や血圧を安定させる作用もあります。
牛乳、チーズ、大豆製品、種実、バナナなどに多く含まれ、肉や魚からも摂取できます。過剰摂取により肝硬変や肝機能障害が起こることもあるので、ごはん、納豆、魚、味噌汁などバランスの良い食事を心がけると良いでしょう。