食物繊維
食物繊維は、摂っても人の消化酵素では消化できない食品中の難消化成分総称を指し、主に野菜・果物・海藻など植物性食品に含まれています。
以前は栄養素とは考えられていませんでしたが、血中のコレステロール値低下作用や糖質の吸収抑制作用、大腸の運動を促したりする働きが認められ、現在は第6の栄養素と呼ばれるようになっています。
水に溶けない不溶性食物繊維と、水に溶けやすい水溶性食物繊維とでは、働きが違いますが、どちらも腸内の老廃物を排出し、きれいにして腸内環境を整えます。

食物繊維の種類と働き
不溶性食物繊維の働き
不溶性食物繊維は、ごぼうなど繊維の多い野菜に含まれるセルロースなどがあり、水に溶けず、保水性が高く、腸壁を刺激して便の排泄を促進します。不溶性食物繊維の多い食品はよく噛む必要があるため、食べすぎを防ぎ、顎(あご)の発育を促し、歯並びをよくします。
また不溶性食物繊維は排便をスムーズにするだけではなく、大腸内を通過するときに、水銀やカドミウムのような有害金属や、発ガン物質のダイオキシンをはじめとする有害物質を吸着し、一緒に排泄する働きもあります。
種類と食品
・セルロース:穀類、豆類、野菜
・ヘミセルロース:穀類、豆類、野菜、海藻類
・ペクチン:野菜、未熟果実
・リグニン:豆類、ふすま、野菜、ココア
・イヌリン:ゆり根、ごぼう、きくいも
・キチン:カニ、エビの殻
水溶性食物繊維の働き
果物などに多く含まれるペクチンや、こんにゃくに含まれるマンナンなどがあり、水に溶けやすい性質があり、水に溶けると粘性が生じます。粘着性により胃腸内の滞留時間を長くさせる働きがあり、お腹をすきにくくし、食べすぎを防ぎます。糖質の吸収をゆるやかにする他、食後血糖値の急激な上昇を抑え、糖尿病を予防します。
また粘性のある水溶性食物繊維は、腸内を通過していく途中で、コレステロールや、コレステロールから作られる胆汁酸などを吸着し体外に排出してくれます。食物繊維は消化も吸収もほとんどされず、そのまま排出されるため、コレステロールの吸収・再利用が抑えられ、脂質異常症や動脈硬化などの生活習慣病が起こりにくくなります。
他にも大腸内で発酵・分解されると、ビフィズス菌などが増えて腸内環境がよくなり、整腸効果があります。
種類と食品
ペクチン:果物、りんごや柑橘類の皮、野菜
グアガム:マメ科の植物
アルギン酸:こんぶ、わかめ
グルコマンナン:こんにゃく
食物繊維の標準摂取量
「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、国民健康・栄養調査結果をもとに一般的日本人の食物繊維摂取量が少ないことが考慮され、今後5年間実現可能な量として成人の食物繊維「目標量」を成人男性では1日20g以上、女性では18g以上としました。
しかし、毎日の健康な排便のためには1日20g、また心筋梗塞による死亡率の低下が観察された研究では1日24g以上が必要と報告されており、現代の日本人に不足しがちな食物繊維は、もっと積極的にとる必要があります。
食物繊維が多く含まれる食材
以下の順で記述します。
- 品名
- 含有量(g/100g)
- 1食あたり(重量)
- 1食あたりの成分含有量
- いんげん豆(ゆで)
- 11.8g
- 1/2カップ(80g)
- 10.6g
- おから
- 11.6g
- 50g
- 5.8g
- ごぼう
- 5.7g
- 1/2本(100g)
- 5.7g
- 菜の花
- 4.2g
- 1/2束(100g)
- 4.2g
- りんご
- 1.3g
- 1個(300g)
- 3.8g
- こんにゃく
- 2.2g
- 50g
- 1.1g
食物繊維の過剰摂取
不溶性食物繊維のみを摂りすぎると便の水分がなくなり、硬便となり便秘を更に悪化させてしまう事もあります。ですが、「不溶性食物繊維を食べると便秘になる」ということではなく、不溶性食物繊維を摂る際は水分をたっぷりと摂ることが大切です。
逆に、水溶性食物繊維を摂りすぎると下痢を引き起こし、必要なミネラル分まで排出してしまいます。
また、下痢の症状が長く続くと、腸での栄養吸収を低下させ、特に脂肪の利用が低下するため脂溶性ビタミンの吸収が低下します。
どちらかのみを多く摂るのではなく、それぞれの働きをよくするためには不溶性食物繊維2:1水溶性食物繊維の割合で摂取出来るように心がけましょう。
関連リンク: ビタミン | ミネラル
食物繊維の欠乏症
不溶性食物繊維の欠乏症
便秘や痔になりやすくなります。
また便秘になる事で腸内の便の滞留時間が長くなり大腸がんになるリスクが高くなります。
水溶性食物繊維の欠乏症
肥満・糖尿病になりやすく動脈硬化・高脂血症や高血圧・虚血性心疾患のリスクが高くなります。
食物繊維の食べ合わせ
食物繊維と糖質
水溶性食物繊維の多くは水に溶けると水に溶けるとゲル化し、食事内容物の胃内滞留時間を延長させ、小腸内で糖質の消化・吸収速度をゆるやかにし、急激な血糖値の上昇を防ぐ効果があります。血糖の上昇がゆるやかであればインスリンが無理なく作用し、不足することがなくなります。
そのため、糖尿病の予防や治療において重要な効果が期待されます。
関連キーワード
<難消化デキストリン>
難消化性デキストリンとは、水溶性食物繊維の一種です。
トウモロコシのデンプンを培焼し、アミラーゼ(食物として摂取したデンプンを消化する酵素)で加水分解し、未分解物より難消化性成分を分取して脱塩、脱色して調製される水溶性食物繊維です。
不足しがちな食物繊維を補う目的で作られ、低粘性・低甘味で水溶液はほぼ透明、耐熱性・耐酸性に優れており広範囲の食品への応用が可能です。
厚生労働省許可による特定保健用食品として一定の機能表示がされており、安全であることも認められていることもあり、近年、特定保健用食品(トクホ)の多くに採用され、機能性表示食品の素材としても注目されています。
~難消化性デキストリンの4つの働き~
1:糖質、脂質の吸収スピードを緩める働き
2:腸の調子を整える働き
3:内臓脂肪を低下させる働き
4:ミネラル成分の吸収を高める働き
関連リンク: 糖質 | 脂質