モリブデン
モリブデンは私たちの体内において、肝臓や腎臓に含まれる必須ミネラルの1つです。体内のモリブデン量は成人でも9mg以下と少なく微量ミネラルですが、最終老廃物である尿酸を作り出す働きをサポートする重要な成分です。
モリブデンは酵素の構成成分となることにより、糖質や脂質の代謝に関わります。また、鉄の働きを促す酵素の主成分として造血に役立ち「血のミネラル」とも呼ばれ、豆類、レバー、穀類などに含まれます。
モリブデンの働きと性質
原子番号が42のクロム属元素の1つで、銀白色の硬い金属です。
モリブデンは人間の生命維持に必要とされ欠かせない必須ミネラルの1つで、体内に存在する量は成人でも9mgと極めて少なく、1日あたりの必要所要量が100mg以下であることから微量ミネラルに分類されます。
私たちの体内では肝臓と腎臓などに存在し、キサンチンオキシダーゼ、アルデヒドオキシダーゼ、亜硫酸オキシダーゼという補酵素の働きをサポートします。
この3つの補酵素は、糖質や脂質の代謝に関与し、特に尿酸を生成するときに重要な役割をします。
また、モリブデンは体内での銅が過剰にならないように銅を排泄したり、鉄の代謝を活性化して造血を促す働きがあり、鉄欠乏性貧血を予防する効果があります。
モリブデンの食事摂取基準
性別 | 男性 | 女性 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
年齢 | 推定平均 必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐用 上限量 |
推定平均 必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐用 上限量 |
0〜5ヶ月 | - | - | 2 | - | - | - | 2 | - |
6〜11ヶ月 | - | - | 3 | - | - | - | 3 | - |
1〜2歳 | - | - | - | - | - | - | - | - |
3〜5歳 | - | - | - | - | - | - | - | - |
6〜7歳 | - | - | - | - | - | - | - | - |
8〜9歳 | - | - | - | - | - | - | - | - |
10〜11歳 | - | - | - | - | - | - | - | - |
12〜14歳 | - | - | - | - | - | - | - | - |
15〜17歳 | - | - | - | - | - | - | - | - |
18〜29歳 | 20 | 25 | - | 550 | 20 | 20 | - | 450 |
30〜49歳 | 25 | 30 | - | 550 | 20 | 25 | - | 450 |
50〜69歳 | 20 | 25 | - | 550 | 20 | 25 | - | 450 |
70歳〜 | 20 | 25 | - | 550 | 20 | 20 | - | 450 |
妊婦 (付加量) |
- | - | - | - | - | - | - | - |
授乳婦 (付加量) |
- | - | - | - | +3 | +3 | - | - |
モリブデンの推定平均必要量は男性20~25μg(許容上限量550μg)、女性20μg(許容上限量450μg)、授乳婦の付加量は+3μgです。
通常の食事であれば、モリブデンの摂取量は推奨量よりも多くなり、欠乏することはありません。
モリブデンの多く含まれる食材
以下の順で記述します。
- 品名
- 含有量(100gあたり/μg)
- 1食あたりの目安重量(g)
- 1食あたりの成分含有量(μg)
- 納豆
- 290
- 1パック(40g)
- 116
- 枝豆(生)
- 240
- 50g
- 130
- そら豆(生)
- 150
- 80g
- 120
- 豚レバー
- 120
- 50g
- 60
- 落花生
- 88
- 30g
- 26
- スパゲッティ(乾)
- 53
- 80g
- 42
- もち
- 45
- 1切れ(50g)
- 23
- ごはん
- 30
- 1杯(150g)
- 45
モリブデンの過剰摂取
通常の食生活では過剰症になる事はありません。
仮に過剰摂取になった場合でも、体外に排出され健康に影響することはないとされていますが、銅の摂取量が極端に少ないと尿中に銅の排泄量が増え、痛風のような症状(高尿酸血症、関節の痛みや腫れなど)が起こることがあると考えられています。
モリブデンの欠乏症
推奨されている摂取量は微量で、胃や小腸で吸収されて比較的体内への吸収率が良いミネラルのため、通常の食生活では欠乏症が起こることはありません。しかし、加工品を多く摂取すると不足しやすくなるのでバランスの良い食事を摂取するように心がけましょう。
土壌や飲料水中にモリブデンの濃度が低い地域では食道がんの発生率が高いこともあり、モリブデンが不足すると発がんのリスクが高まると考えられています。
モリブデンの食べ合わせ
体の中の銅の量が極端に少ないと、モリブデンの過剰症の症状が出やすくなります。また、銅が不足すると鉄の吸収や利用効率が下がるため、貧血の症状が起こりやすくなります。モリブデンは銅の排泄や鉄の代謝に関与するため、銅や鉄をバランスよく摂取すると効果的です。
モリブデン、銅、鉄ともに多く含む食材としてレバーがあります。
モリブデンの関連キーワード
尿酸
細胞の遺伝子中に含まれるプリン体が分解されて出来る老廃物で、腎臓から尿と共に排泄されます。血中の尿酸が過剰(高尿酸血症)になると,関節の軟骨などに尿酸の結晶が沈着して痛風になります。
痛風の症状は風が吹いても痛いと言われるほどで、足の指や足首、膝などに起こる急性の関節炎で、痛風になる人の90%は男性です。
尿酸の原料となるプリン体はレバーや魚卵、干物などに多く含まれます。肉食やアルコールを多く摂取する習慣がありエネルギーを摂りすぎると、尿酸を代謝する機能が衰えて高尿酸血症を起こし痛風のリスクを高めます。