ヨウ素(ヨード)
ヨウ素は「ヨード」とも呼ばれ、甲状腺ホルモンの構成成分となっているミネラルです。甲状腺ホルモンは、たんぱく質の合成、酵素反応を中心に、細胞の発達や組織の成長を促したり、基礎代謝を高めてエネルギー消費量を増やしたりします。ヨウ素は海中に多く存在するため、海藻や魚に多く含まれています。
ヨウ素は、過剰、欠乏のいずれにおいても甲状腺などに健康障害が引き起こされるため、摂取量には注意が必要です。また、ヨウ素には殺菌作用もあり、消毒薬としても使用されています。
ヨウ素の働きと性質
ヨウ素は体内に10mgほど含まれており、そのほとんどが甲状腺に存在し、甲状腺ホルモンの成分となっています。
甲状腺ホルモンは、たんぱく質の合成を高めたり、成長ホルモンの分泌を刺激したりして、全身の細胞や組織の成長を促す、発育に不可欠なホルモンです。
また、基礎代謝を高め、エネルギー消費量を向上させるように働くホルモンです。
ヨウ素の食事摂取基準
性別 | 男性 | 女性 | ||||||
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年齢 | 推定平均 必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐用 上限量 |
推定平均 必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐用 上限量 |
0〜5ヶ月 | - | - | 100 | 250 | - | - | 100 | 250 |
6〜11ヶ月 | - | - | 130 | 250 | - | - | 130 | 250 |
1〜2歳 | 35 | 50 | - | 250 | 35 | 50 | - | 250 |
3〜5歳 | 45 | 50 | - | 350 | 45 | 50 | - | 350 |
6〜7歳 | 55 | 75 | - | 500 | 55 | 75 | - | 500 |
8〜9歳 | 65 | 90 | - | 500 | 65 | 90 | - | 500 |
10〜11歳 | 80 | 110 | - | 500 | 80 | 110 | - | 500 |
12〜14歳 | 100 | 140 | - | 1,200 | 100 | 140 | - | 1,200 |
15〜17歳 | 100 | 140 | - | 2,000 | 100 | 140 | - | 2,000 |
18〜29歳 | 95 | 130 | - | 3,000 | 95 | 130 | - | 3,000 |
30〜49歳 | 95 | 130 | - | 3,000 | 95 | 130 | - | 3,000 |
50〜69歳 | 95 | 130 | - | 3,000 | 95 | 130 | - | 3,000 |
70歳〜 | 95 | 130 | - | 3,000 | 95 | 130 | - | 3,000 |
妊婦 (付加量) |
- | - | - | - | +75 | +110 | - | - |
授乳婦 (付加量) |
- | - | - | - | +100 | +140 | - | - |
成人では、男性、女性ともに、130μg /の摂取が推奨され、上限は3,000μg /日とされています。
多くの血液を必要とする妊婦や授乳婦はそれぞれ、130μg /日、140μg /日の付加量が必要とされています。
ヨウ素が多く含まれる食材
以下の順で記述します。
- 品名
- 含有量(100gあたり/μg)
- 1食あたりの目安重量(g)
- 1食あたりの成分含有量(μg)
- こんぶ
- 131,000μg
- 5g(佃煮)
- 6,550μg
- わかめ
- 7,790μg
- 10g
- 779μg
- のり
- 6,100μg
- 3g
- 183μg
- いわし
- 268μg
- 80g
(可食部) - 214μg
- さば
- 248μg
- 100g
(1切れ) - 248μg
ヨウ素の過剰摂取
健康な人はヨウ素の摂取量が多少増えても、排泄によって体内のヨウ素の量を調節することができます。しかし、長期間ヨウ素の過剰摂取が続くと、ヨウ素が不足した場合と同じく発育異常を起こしたり、甲状腺肥大や甲状腺腫などを引き起こします。
ヨウ素が過剰になると、体内でのヨウ素の代謝が抑制され、活性の高い甲状腺ホルモンへの変換がうまくいかず、甲状腺の機能低下を起こすことがあるためです。
また、甲状腺ホルモンは基礎代謝を調節するホルモンでもあるため、ヨウ素の過剰摂取によって体重増加、頻脈、筋力低下、皮膚熱感などの症状がみられることがあります。
ヨウ素を多く含む食品を摂取する場合、大豆製品(味噌、納豆、しょう油、豆腐など)と一緒に摂取することでヨウ素の排出を助けると言われています。
ヨウ素の欠乏症
海産物を多く食べる習慣のある日本の場合は、ヨウ素不足が問題となることはほとんどありません。
ヨウ素の摂取が不足すると、甲状腺ホルモンの生成が出来なくなり、そのため、甲状腺刺激ホルモンの分泌が増加し、甲状腺の発達を促進することで、ヨウ素不足を補おうとしますが、この状態が続くと、のどの部分が腫れて機能低下を起こす甲状腺の肥大、甲状腺腫が起こります。
ヨウ素欠乏による甲状腺ホルモンの生成不足により、精神発達の遅れ、甲状腺機能低下症、クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)、成長発達異常、舌の巨大化、などが起こることが知られています。
クレチン症は、母親のヨウ素欠乏を主な原因とし、精神障害と神経系の障害を伴う成長不全をもたらすもので、今日でも発展途上国に多く発生しています。
ヨウ素の食べ合わせ
みそやしょう油、納豆、豆腐などの原料である大豆にはヨウ素中毒を防ぐ働きがあります。日本では海藻をよく食べますが、わかめの味噌汁や、ひじきの煮物に入った大豆など、過剰症も防げるよう昔から組合せて食べられてきました。
過剰症や、欠乏症にならないよう、1つの食材だけを食べるのではなく色々な食材を用いて、バランスよく食事をすることが大切です。
ヨウ素の関連キーワード
ヨード卵
ヨウ素を添加した食品として代表的なものに、ヨード卵があります。メーカー発表によると、0.6mgのヨウ素がヨード卵1個あたりに含まれています。
ヨード卵は鶏のエサに海藻粉末などを混ぜて産卵させているため、普通の卵と比べ栄養価が高いといえます。
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)
甲状腺ホルモンは、全身の組織の代謝を活発にする働きがあります。そのため甲状腺ホルモンが多くなるバセドウ病(甲状腺機能亢進症)の場合、エネルギー消費が高まるため心臓が多くの血液を送らなくてはならなくなり、頻脈になります。
体温も上昇し、汗をかきやすく、食事を十分に食べていても体重減少が起こります。
一方で、甲状腺ホルモンが少なくなる甲状腺機能低下症(橋本病やクレチン症)は、全身の代謝が低下するため、体のさまざまな機能が低下し、精神機能の低下また、心臓機能の低下により脈が遅くなったりします。他には体重増加、寒がり、疲労感がよくみられます。