ビタミンK
ビタミンKは脂溶性ビタミンの1つで、血液の凝固に関与することから「止血ビタミン」とも呼ばれます。腸内細菌によって体内で合成されたり、植物の葉緑素でも合成されます。また、カルシウムが骨に沈着する時に必要なタンパク質を活性化し、骨の形成を促す働きをするため、丈夫な骨づくりに大切なビタミンです。
ビタミンKの種類と働き
ビタミンKには、ビタミンK1(フィロキノン)とビタミンK2(メナキノン類)があり、ビタミンK1は主に植物の葉緑体で作られ、緑黄色野菜や海藻に含まれています。また、ビタミンK2は、チーズなどの動物性食品に広く分布するメナキノン-4と、納豆菌が産生するメナキノン-7があります。
ビタミンKは、肝臓においてプロトロンビンやその他の血液凝固因子を活性化し、血液を固めて止める働きをします。
出血しても時間が経てば血が止まるのは、血液凝固因子があるからです。
その他、骨に存在するたんぱく質を活性化して骨形成を調整したり、ビタミンK依存症たんぱく質MGPの活性化を介して、動脈の石灰化を抑制することもビタミンKの重要な働きです。
また、食事から摂取する以外に、体内の腸内細菌によっても産生されるが、必要な摂取量を満たすほどは多くないと考えられています。
ビタミンKの食事摂取基準
性別 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
年齢等 | 目安量 (μg/日) | 目安量 (μg/日) |
0〜5ヶ月 | 4 | 4 |
6〜11ヶ月 | 7 | 7 |
1〜2歳 | 60 | 60 |
3〜5歳 | 70 | 70 |
6〜7歳 | 85 | 85 |
8〜9歳 | 100 | 100 |
10〜11歳 | 120 | 120 |
12〜14歳 | 150 | 150 |
15〜17歳 | 160 | 160 |
18〜29歳 | 150 | 150 |
30〜49歳 | 150 | 150 |
50〜69歳 | 150 | 150 |
70歳〜 | 150 | 150 |
妊婦 | - | 150 |
授乳婦 | - | 150 |
成人では男女ともに1日に150㎍が目安量とされており、通常の食生活では過剰になる可能性は低いため、上限は設けられていません。
ビタミンKが多く含まれる食材
以下の順で記述します。
- 品名
- 可食部(100gあたり/μg)
- 1食あたりの目安重量(g)
- 1食あたりの成分含有量(μg)
- ひき割り納豆
- 930
- 1パック(40g)
- 372
- モロヘイヤ
- 640
- 50g
- 320
- 納豆
- 600
- 1パック(40g)
- 240
- あしたば
- 500
- 50g
- 250
- ほうれん草(茹)
- 320
- 50g
- 160
- ほうれん草(生)
- 270
- 50g
- 135
- 小松菜
- 210
- 50g
- 105
- しそ
- 690
- 1束10枚(10g)
- 69
ビタミンKの過剰摂取
日常の食生活で過剰症は見られません。
しかし、血液の凝固を防ぐ抗血液凝固剤を服用している人は、ビタミンKを多く含む食品を制限することがあります。
ビタミンKの欠乏
ビタミンKは体内において腸内細菌で合成されるため、日常の食生活では欠乏症はほとんど見られません。
しかし、長期間にわたり抗生物質を服用して腸内細菌が減少した場合、血液凝固の遅延などの症状が起こります。
また新生児は腸内細菌が少ないため、体内での合成が不十分で、頭蓋内出血や新生児メレナ(消化管出血)を起こすことがあります。
ビタミンKの食べ合わせ
脂溶性ビタミンのため、油と一緒に摂ると吸収率があがります。
熱に強いため、炒め物だけではなく煮物にしたり、味噌汁に入れても手軽に摂取できますが、一番手軽に摂れる納豆がオススメです。
ビタミンKの関連キーワード
プロトロンビン
血液中にあって止血作用を担う凝固因子の中の1つ。血漿中に含まれる糖タンパク質であり肝臓で生成され,その際ビタミンKを必要とします。
新生児メレナ(消化管出血)
新生児がビタミンK欠乏症により消化管出血を起こすもので、茶褐色の吐血と血便を伴います。 ビタミンKは胎盤を通過しにくく、母乳からの摂取量も少なく、体内の腸内細菌による産生も低いと考えられることから、ビタミンKの欠乏に陥りやすいです。 しかし、予防の目的で処方されるK2シロップの投与により、新生児メレナの発症は減少しています。
K2シロップ
新生児のビタミンK欠乏症の予防のために多くの産院では、出生後、退院時もしくは1週間後、1ヶ月検診時の3回、K2シロップを投与します。