リン
リンは、カルシウムに次いで体内に多く存在するミネラルで、カルシウムとともに骨や歯を形成し丈夫な骨づくりのために不可欠です。またエネルギーの貯蔵など、細胞内のエネルギー代謝や脂質代謝などにおいて重要な役割を担っています。
リンは多くの加工食品に食品添加物として広く使用されていることから、近年ではリンの摂取過多が憂慮されています。
リンの働きと性質
リンはカルシウムに次いで体内に多く存在するミネラルで、成人の体重の約1%を占め、最大850gのリンが体内に存在しています。このうちの約85%はカルシウムやマグネシウムと結合し、骨や歯を形成しています。
残りの15%はタンパク質、脂質、糖質などと結合し、筋肉、脳、神経などの様々な組織に含まれています。またATP(アデノシン三リン酸)※1という高エネルギーをつくり出す時に必須の役割をしています。
(※1 ATP(アデノシン三リン酸):ATPは、エネルギーの放出・貯蔵、あるいは物質の代謝・合成の重要な役目を果たし、エネルギーを要する生物体の反応素過程には必ず使用されている。ATPは骨格筋100 gあたり0.4 g程度存在する)
関連リンク: カルシウム | マグネシウム
炭水化物(糖質) | タンパク質 | 脂質
リンの食事摂取基準
性別 | 男性 | 女性 | ||
---|---|---|---|---|
年齢 | 目標量 | 耐用 上限量 |
目標量 | 耐用 上限量 |
0〜5ヶ月 | 120 | - | 120 | - |
6〜11ヶ月 | 260 | - | 260 | - |
1〜2歳 | 500 | - | 500 | - |
3〜5歳 | 800 | - | 600 | - |
6〜7歳 | 900 | - | 900 | - |
8〜9歳 | 1,000 | - | 900 | - |
10〜11歳 | 1,100 | - | 1,000 | - |
12〜14歳 | 1,200 | - | 1,100 | - |
15〜17歳 | 1,200 | - | 900 | - |
18〜29歳 | 1,000 | 3,000 | 800 | 3,000 |
30〜49歳 | 1,000 | 3,000 | 800 | 3,000 |
50〜69歳 | 1,000 | 3,000 | 800 | 3,000 |
70歳〜 | 1,000 | 3,000 | 800 | 3,000 |
妊婦 | - | - | 800 | - |
授乳婦 | - | - | 800 | - |
成人男性では、1000mg/日(成人男性)、成人女性は800mg/日が推奨されており、1日の摂取上限量は3000mgとされています。
骨が大きく成長する10代では多く必要とされていますが、妊婦、授乳婦は特に多く摂取する必要はありません。
リンが多く含まれる食材
以下の順で記述します。
- 品名
- 含有量(100gあたり/mg)
- 1食あたりの目安重量(g)
- 1食あたりの成分含有量(mg)
- ししゃも
- 360mg
- 60g(3尾)
- 258mg
- いわし丸干し
- 570mg
- 40g
- 228mg
- プロセスチーズ
- 730mg
- 30g
- 219mg
- ヨーグルト
- 104mg
- 210g(1カップ)
- 219mg
- 牛乳
- 92mg
- 210g(1カップ)
- 195mg
- 高野豆腐(乾)
- 880mg
- 20g
- 176mg
リンの過剰摂取
リンを過剰摂取すると、腎機能の低下、副甲状腺肥大の原因や、カルシウムの吸収抑制などが起こることが知られています。
リンはカルシウム代謝と関係が深く、カルシウムと血中でバランスを保って存在しています。リンの取り過ぎによって血液中のリン濃度が上昇しバランスが崩れると、骨から血液中にカルシウムが放出され、骨のカルシウム濃度を減少させてしまいます。
丈夫な骨のためにカルシウムをしっかり摂取する事が大切ですが、一方でリンをとり過ぎないことも重要なのです。
関連リンク: カルシウム
リンの欠乏
リンは広く食品に含まれていて、通常の食事で不足する事はありません。
加工食品の食品添加物として多用されており、過剰摂取の方が問題視されています。
ただ、仮にリンが欠乏すると骨や歯が弱くなる原因となり、歯槽膿漏や骨軟化症を引き起こす可能性があります。また関節・筋肉が弱くなったり、神経痛を起こしやすくなったりもします。
リンの食べ合わせ
カルシウムとリンの摂取比は1:1が理想的とされています。
リンは過剰摂取が気になる栄養素ですが、カルシウムは日本人に不足しがちな栄養素です。日ごろからカルシウム摂取量を増やしつつ、リン摂取量を減らす(加工食品や肉類を食べ過ぎない)心がけが大切です。
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食品添加物としてのリン
食品添加物としてのリンは、リン酸塩、重合リン酸ナトリウムなどがあり、リン酸Na、リン酸塩(Na)と表示されています。
ソーセージやハム、缶詰、調味料、インスタントラーメンなどに含まれ、食品の形状や保水性を維持するために使用される結着剤として使用されるほか、乳化剤、酸味料、弾力・食感を良くるためにも使用されています。
プロセスチーズのリンの含有量が高いのは、原材料の牛乳にもともと多く含まれている事もありますが、複数のチーズを混ぜ合わせる際、きれいに均一に混ぜるためリン酸塩が乳化剤として使われているからです。
清涼飲料水にもリン酸塩が使用されていますが、清涼飲料水100mlに対して15mg程度添加されているだけなので、飲み過ぎは問題ですが、たまに1本程度飲む分には心配いりません。
加工食品によるリンの過剰摂取が気になる場合は、一度湯通しすると半減されるので、インスタントラーメンや中華麺は麺のゆで汁を1度捨てたり、ハム・ソーセージは調理の前に湯どおしすると良いでしょう。