人の体の中で行われる「代謝の仕組み」について覚えよう(前編)

代謝は、単純に生物が「生きるそのものが代謝を行っている」と言っても過言ではありません。人は生きるために、食物を食べ、息を吸って呼吸をし、水を飲み、汗をかき、排出したりします。この体の中で行われている生命活動そのものが「代謝」です。 前編では、その代謝を理解するのに必要な知識であるエネルギー分子のATPについて説明していきます。


人の体の中で行われる代謝について知っておこう(1)

代謝の定義とは

代謝の定義では「人の体の中で行われる、合成や分解のエネルギーの変換を代謝」となります。

人は、食物から栄養を補い、そこからエネルギーを生み出して活動し、老廃物を排出し生きています。その間、絶えず人の体は、化学変化をしながら、絶えず代謝を行っているのです。

しかし、食べた物そのものが、全て同じようにそのままエネルギーになるのではなく、食品に含まれる栄養素の違いによって体で使われるエネルギーになったり、体の構成成分になったり、脂肪を貯えたり、体の調子を整えたりと、それぞれの役割を果たします。

その一つ一つの栄養素には、まだ正式に判明していない、分からない働きもありますが、今ある中で食べ物が体の中でどのような変化過程を行っているのかをお伝えしていきます。

体のエネルギー分子はATP

ATPとは、人の体の中で必要なエネルギー分子「アデノシン三リン酸」と呼ばれるもので、「Adenosine Triphos Phate」の下線部のアルファベットをとり「ATP(エー・ティー・ピー)」と呼ばれています。

ATPとは、有機化合物と呼ばれる炭素原子Cを含む化合物の一つで、核酸を構成している塩基の一つです。このATPが、最終的には体のあらゆる場所でエネルギーとして使われます。


アデニンに五炭糖であるリボースがついて、アデノシンになり、さらに三つの「リン酸基」が結合した「リン酸化合物」がATPです。

このアデノシンは、DNA や RNAの塩基としても使われ、体内においてかなり重要な物質ですので、覚えておきましょう。


分子式

*アデニン(C5H5N5)有機化合物の塩基
*リボース(C5H10O5)生物細胞中に存在する単糖類
*アデノシン(C10H13N5O4)
*リン酸基( H2PO4−)



人のエネルギーになるカロリーとは?

食品のエネルギーや運動したカロリーは、ATPと関係があります。

リン酸とリン酸の結合部に「結合エネルギー」として保存されているエネルギー。このリン酸化合物のリン酸基が一つ離れ「ADP」(アデノシン二リン酸)となる際に、1モルで約7.3カロリーのエネルギーができる仕組みになっています。

つまり、1つのATPと、1つのH2Oが合わさった時に約7kcalのエネルギーができるのです。


そのため食品の表示のカロリーは、その食べた食品が、生体内でどれだけのエネルギーを生み出すかの値であり、運動した際のカロリーは、生体内でどれだけエネルギーを消費するかの値となっています。

このように人の体では「食事をしてエネルギーを得て、運動してエネルギーを使う」という行為を常に行っているのです。

ATPが作られるまで

エネルギー分子のATPが作られるまでの流れにはいくつかあり、細胞のなかで作られる主な流れは「解糖系」と「TCAサイクル(クエン酸回路)」です。

この2つの経路は、細胞内で作られ、作られたATPは筋肉が収縮する時に直接のエネルギー源となります。

他にもATPを作り出すいくつかの経路はあるのですが、主だった流れはこの二つを理解すると良いでしょう。



次回は、「人の体の消化と吸収」と「体の中の酸化と還元」について説明していきます。






この記事を書いた人
松下 和代
松下 和代

栄養士・調理師・保育士・食品アドバイザー

食事は、「心のこもった温かい手で」をモットーに、栄養士取得後、包丁とギターを抱えて、児童養護施設に住み込みで働く。さらに、栄養士として実績をつむために、ミルク会社のメールマガジンの編集・栄養・保育の相談を担当して、栄養相談の実績をつむ。三人の子のママ。