たんぱく質の代謝について知っておこう

たんぱく質は、肉や魚や卵、牛乳に多く含まれていて、主に「人の体を構成するための栄養素」です。そしてこのたんぱく質は、体を作る役割以外にも、エネルギーを生み出すこともできます。ここで詳しく「たんぱく質の代謝」について学んでいきましょう。


たんぱく質の代謝について知っておこう

食べた「たんぱく質」はアミノ酸になる

まず、食物中に含まれるたんぱく質は、口の中で、咀嚼(そしゃく)され胃にたどり着きます。

ここで、胃液消化酵素ペプシンの作用をうけてポリペプチドに分解され十二指腸に送られます。

十二指腸では、膵液(すいえき)のトリプシンとキモトリプシンによって、オリゴペプチドまで分解されます。

さらに膵液のカルボキシペプチターゼ、腸液のアミノペプチターゼなどによってアミノ酸にまで分解されます。(アミノ酸は、1個つながったものから2個、3個つながったものがあります。)

そして最後に、小腸の絨毛(じゅうもう)血管で吸収されて門脈を通り肝臓に運ばれます。

吸収されたアミノ酸は、グルコースと同じように肝臓から全身に運ばれていきます。

関連リンク: たんぱく質

人の体のアミノ酸は「20種類」

人の体に必要なたんぱく質の構成成分になるアミノ酸は、20種類あります。

その中でも人が合成できず、食事からとらないといけないアミノ酸を「必須アミノ酸」と呼び、必須アミノ酸は9種類あります。

また筋肉が好んで使うアミノ酸を「分岐鎖アミノ酸(通称:BCAA」と呼びます。

さらに、神経物質の前駆体(ある物質の前段階の物質)となるアミノ酸を「芳香族アミノ酸(通称:AAA)」と呼びます。

関連リンク: BCAA | AAA(近日公開)

必須アミノ酸

非必須アミノ酸


※バリン、ロイシン、イソロイシン は、分岐鎖アミノ酸(BCAA)
※フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン、チロシン、チロキシンは、芳香族アミノ酸(AAA)

「アミノ酸プール」はアミノ酸の貯蔵庫

分解されたアミノ酸は、肝臓にあるアミノ酸プールに蓄えられます。

たんぱく質もエネルギー生産に関わることがありますが、たんぱく質は、たんぱく質の構成成分である「アミノ酸」がエネルギーとして利用されます。


「アミノ酸」は、一つの炭素原子(C)にアミノ基(NH₂)と、カルボキシル基(COOH)水素(H)が結合した形を基本としています。

このアミノ酸には、体の中でエネルギー不足となった時、たんぱく質を分解してエネルギー生産として利用する役割もあります。

その際、アミノ酸の炭素を含む「炭素骨格」と呼ばれる部分が、直接「TCA回路」で代謝されエネルギーを生産する方法と、肝臓に運ばれて「糖新生」でグルコースに作り変えられる方法があります。

アミノ酸の分解の始めは「脱アミノ反応」

アミノ酸はアミノ基があるため分解しにくく、まず第一歩として「脱アミノ反応」でアミノ基を外します。これには「アミノ基転移反応」と「酸化的脱アミノ反応」の二つがあります。

アミノ基転移反応

アミノ酸からアミノ基を外して、他のケト酸にくっつき、また別のアミノ酸に変わること。この反応では、補酵素としてビタミンB6が必要となってきます。

また、このアミノ基転移反応は、アミノ酸からエネルギー(ATP)を作るための最初の反応で、以下の三つが大切です。

関連リンク: ビタミンB6

酸化的脱アミノ反応

アミノ基転移反応でできたアミノ酸(グルタミン酸)がアミノ基を外して2-オキソグルタル酸となり、離れたアミノ基はアンモニアになります。

2-オキソグルタル酸は、TCAサイクルに入り、エネルギーとなりアミノ基転移反応の気質として利用されます。

残された炭素骨格(α‐ケト酸)の行方

アミノ酸からアミノ基が外れた残りの炭素骨格をα‐ケト酸と呼びます。

α‐ケト酸には、ピルビン酸、オキサロ酢酸、アセチルCoA、α‐ケトグルタル酸、スクシニルCoA、フマル酸、アセト酢酸などがあります。


α‐ケト酸が分解されると、アセト酢酸以外は、TCAサイクル(クエン酸回路)に入り、最終的には二酸化炭素と水になります。

また、α-ケト酸は、グルコースや脂肪酸などの合成材料になり、ピルビン酸、オキサロ酢酸、α‐ケトグルタル酸スクシニルCoA、フマル酸は、糖新生でグルコースに変換されます。

炭素骨格(α‐ケト酸)の代謝

アミノ基転移反応により残された炭素骨格(α-ケト酸)は、さまざまな代謝を受けることにより、それぞれTCAサイクル(クエン酸回路)に関係する化合物となります。

α‐ケト酸が代謝されて生成される化合物

アミノ酸の種類 化合物
アラニン、システイン、トレオニン、トリプトファンピルビン酸
ロイシン、イソロイシンアセチルCoA
リシン、フェニルアラニン、チロシン、ロイシン、トリプトファンアセトアセチルCoA
グルタミン、グルタミン酸、アルギニン、プロリン、ヒスチジン α-ケトグルタル酸
バリン、メチオニン、トレオニン、イソロイシンスクシニルCoA
フェニルアラニン、チロシン、アスパラギン酸フマル酸
アスパラギン、アスパラギン酸オキサロ酢酸


脱カルボキシル基反応

アミノ酸のカルボキシル基が外れた時の反応のひとつに「脱カルボキシル基反応」があります。

この反応で、アミノ酸から生理活性物質であるアミンが生成され、人の体では通常と違う反応が生じます。


例えば、グルタミン酸がこの反応で生じるγアミノ酪酸(GABA)は、神経伝達物質であるため興奮性をもちます。

またヒスチジンの場合は、ヒスタミンを生じるため皮膚が痒くなったり鼻水がでたりします。

トリプトファンからは、セロトニンが生じ幸せな気持ちになります。

これがメラトニンの場合は眠たくなります。

フェニルアラニンは、チロシン→ドーパ→ドーパミン→ノルアドレナリン→アドレナリンとなり興奮した状態になります。

アミノ酸の窒素Nが進む「尿素回路」

アミノ酸の窒素Nの部分は、アミノ酸の代謝でアミノ基を外したりしているうちに有毒なアンモニアを出してしまいます。

このアンモニアを無毒化して尿素にするために、肝臓の「尿素回路(尿素サイクル・オルニチンサイクル)」が働いています。こうしてできた尿素は、最終的に腎臓で排泄されます。

アミノ酸からできる物質

アミノ酸は、このように代謝する過程でほかの物質を合成していきます。代表的なものをいくつかご紹介します。

ホルモン

アミノ酸のチロシンからカテコールアミンと呼ばれるドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン。甲状腺ホルモンであるチロキシン、トリヨードチロシンが合成されます。

神経伝達物質

アミノ酸のトリプトファンからはビタミンB群のナイアシン(ニコチン酸)と神経伝達物質のセロトニン、メラトニンがつくられます。

糖原性アミノ酸

体たんぱく(体を構成するたんぱく質)のアミノ酸からアミノ基が外れ(脱アミノ)、残った炭素骨格からグルコースを構成することができるアミノ酸で、グルコース合成に利用される。

ケト原性アミノ酸

体たんぱく(体を構成するたんぱく質)のアミノ酸からアミノ基が外れ(脱アミノ)、残った炭素骨格からケトン体が形成される。

クレアチニン

クレアチンからの最終代謝産物。慢性腎不全の指標になります。



次回は、「脂質」の代謝について詳しく説明していきます。






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この記事を書いた人
松下 和代
松下 和代

栄養士・調理師・保育士・食品アドバイザー

食事は、「心のこもった温かい手で」をモットーに、栄養士取得後、包丁とギターを抱えて、児童養護施設に住み込みで働く。さらに、栄養士として実績をつむために、ミルク会社のメールマガジンの編集・栄養・保育の相談を担当して、栄養相談の実績をつむ。三人の子のママ。