【スポーツ栄養基礎】グリコーゲンローディング法

人が体を動かすためのエネルギー源として糖質は欠かせません。多くのエネルギーを必要とするアスリートは特に糖質の摂取を心掛けておく必要があります。

その糖質を体に蓄えておき、エネルギー切れを起こさないようにする特殊な食事法を「グリコーゲンローディング法」といいます。今回は、グリコーゲンローディング法のやり方と、有効な競技について解説します。

【スポーツ栄養基礎】グリコーゲンローディング法

グリコーゲンローディング法とは

食事などから摂取された糖質はグリコーゲンの形で筋肉と肝臓に貯蔵され、このグリコーゲンが運動時のエネルギー源として利用されます。

基本的にグリコーゲンが満たされた状態であれば運動を長く継続することができ、特に持久系スポーツでは高いパフォーマンスを発揮することができます。

このメカニズムを利用し、筋肉や肝臓のグリコーゲン貯蔵量を高いレベルにする食事法を「グリコーゲンローディング法」といいます。

グリコーゲンローディング法のやり方

グリコーゲンローディング法のやり方としては、糖質が少ない食事を数日間の間行った後、糖質をたっぷりと含んだ食事をし、試合当日に備えるというものです。



これだけを聞くと至ってシンプルな食事方法では、と思う人も少なくないかもしれませんが、期間の設定や食材の選定など、注意すべき点が多くあります。



以下にグリコーゲンローディング法の実践例を示しました。

期間1日目2〜4日目5〜6日目試合当日
食事制限なし(普通食)制限なし(普通食)高糖質食
運動糖質をしっかりと使う運動控えめな運動控えめな運動


試合当日まで一週間の期間を設け、糖質をしっかりと使い果たすようなトレーニングを実施した後にはエネルギーをあまり使わないように控えめな運動・または休息を取ります。

食事は普段の食事をしたのちに、3日間は糖質エネルギー比70%以上の「高糖質食」を摂取します。この時の糖質源として取り入れると効果的なのが血糖値に影響が少ない「GI値」の低い食品です。

一般的に健康増進やダイエットなどの面ではGI値の低い食品を取り入れることが推奨されていますが、スポーツをする人にとってはGI値の高い食品もトレーニング直前の間食として取り入れるには効果的な食品です。賢く使い分けましょう。

関連ページ:糖質について

グリコーゲンローディング法の食事例

1日の推定エネルギー必要量が4,000kcal程度(マラソン等の持久力系競技を行っている場合)である場合、1食あたり1,000~1,500kcal程度の食事に加え、補食(間食)を取り入れます。

食事のエネルギーの70%というと700~1,050kcalを糖質から摂取するので、ごはんならどんぶり一杯半~2杯を、パスタならば麺だけで500g~750gを、食パンならば6枚切りで4枚~6枚程度を摂取します。

そして残り300~400kcalのエネルギーでたんぱく質や脂質を取り入れます。肉や魚は脂質の少ない部位を選ぶことや、調理の際には油をあまり使わないなどといった制限が発生することになります。

脂質の少ない鶏肉のささみを選んだ場合、200gでたんぱく質が50g程度摂取できますが、エネルギーは約230kcal。わずかな残りのエネルギーで副菜なども賄わなければなりません。

関連ページ:タンパク質について | 脂質について

グリコーゲンローディング法が有効な競技

グリコーゲンローディング法が有効な競技としては、持久力を必要とするスポーツがあげられます。運動時間が長期間にわたり、栄養補給のタイミングが少ないものであれば実施を考えてよいとされています。

一方で瞬発力を必要とする競技や運動時間が短いスポーツではあまり有効ではないので、実施する競技によって取り入れる特殊な食事法です。

「グリコーゲンローディング法」などの特殊な食事法にみられるように、高いレベルでのパフォーマンスが求められるアスリートは、時には食事によって健康を損なうことも少なくありません。

「スポーツ栄養基礎」を全10回にわたって解説しましたが、いかがでしたでしょうか。スポーツ栄養とは、競技力の向上に照準を絞った「戦略」そのものなのです。


これからスポーツを始める人も、すでにスポーツが生活に密着したものである人も、スポーツと同様に食事も「基礎」固めが何よりも大切です。

ぜひこの機会に自分自身の食事を見直して、より高いレベルのパフォーマンスを発揮できる体作りに取り組んでみてはいかがでしょうか。



この記事を書いた人
ライフミール栄養士
ライフミール栄養士

編集部

ライフミール所属の栄養士です。 私たちは、「正しく、美味しい食生活」を少しでも多くの方に送って頂けるように、まずは正しい判断基準を持つための基礎的な栄養学に始まり、楽しく興味を持って頂けるようなコンテンツの提供や、専門性の強い研究テーマまで幅広い情報を発信してまいります。