トランス脂肪酸はなぜ危険?今一度見直す食生活

2015年6月、アメリカ食品医薬品局(FDA)は2018年以降のトランス脂肪酸の食品への使用を原則禁止することを発表しました。 その理由は「安全とは認められない」と結論づけたからです。日本でも10年以上も前から「トランス脂肪酸=危険」と一部の間では言われ続けてきました。アメリカで全廃が決まった今、私たちの身近な食品を今一度見なおしてみましょう。

トランス脂肪酸とは何か?

トランス脂肪酸は危険だ!摂取しない方が良い!と言われていますが、そもそも「トランス脂肪酸」とは、一体何でしょうか?その言葉だけを鵜呑みにせず、まずは、その実体から見てみましょう。


トランス脂肪酸を説明するにあたり、まずは「油脂」について確認しましょう。

皆さんが食べる「あぶら」は、「油(液体)」と「脂(固体)」のことを指し、それを構成するものが、トリアシルグリセロールと呼ばれ、「1つのグリセリンと、3つの脂肪酸」の分子から構成されています。

油脂の成分のほとんどがこの構造をしており、健康診断などで「中性脂肪(TG)」と呼ばれるものは、これを指します。

ちなみに、身体に必要な三大栄養素の1つでもある「脂質」とは、「油脂」や「グリセリン」「脂肪酸」「コレステロール」などを総称して呼ばれています。

関連リンク: 脂質


次に、油脂に含まれる「脂肪酸」についての説明です。

脂肪酸は、大別して「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」があります。

例外もありますが、その違いは、主に動物性(固体)と、植物性(液体・半固体)と覚えるとよいでしょう。

今回、問題となっている「トランス脂肪酸」は、この「不飽和脂肪酸」であり、水素(H)と炭素(C)の二重結合が「トランス(trans:横切って)」しているものことを指しています。

関連リンク: 必須脂肪酸



トランス脂肪酸の危険性は?

トランス脂肪酸とは何かとは、分かりましたが、「トランス脂肪酸」の何が一体悪いと言われているのでしょうか?

トランス脂肪酸とは、草食動物の胃で生成され、乳製品や食肉に少量含まれる天然のものもありますが、大部分は油脂を加工する際の「水素添加」などによって生成されています。

つまり、ほとんどが人工でつくられたもので、自然界には存在しないものなのです。

諸外国では、トランス脂肪酸に関する研究結果が幾つも発表され、悪玉コレステロールを増やし、体内で代謝されにくいことが分かっており、それが主に次のことに影響すると言われています。

●冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症等)を増加させる可能性が高い

●肥満、アレルギー性疾患(喘息、アレルギー性鼻炎等)について、報告が認められた。

●妊産婦・胎児への影響(胎児の体重減少、流産等)について、報告されている。

※「食品に含まれるトランス脂肪酸」評価書の概要[PDF](食品安全委員会)より引用

アメリカ既に、加工食品に飽和脂肪酸やトランス脂肪酸などの含有量の表示の義務づけや食品への使用規制などの対策が行われています。
トランス脂肪酸に関する各国・地域の取り組み参照

トランス脂肪酸の摂取して良い目安量は?

WHO(世界保健機関)はトランス脂肪酸の摂取量を総エネルギー摂取量の1%未満にすることを推奨しています。

1日の消費エネルギーが1,800kcalの場合は、約2グラム未満が目標値となります。

農林水産省の調査では、1人1日当たり食べているトランス脂肪酸の平均的な量は0.92~0.96グラムという結果でした。

目標値を下回っているとのことで、現時点の日本では、食品中のトランス脂肪酸についての表示義務や含有量に関する基準値はありません。
参考リンク:トランス脂肪酸に関する調査研究(農林水産省)

摂れば摂るほどリスクを高めるものですので、1%未満ではなく出来る限り摂取しないようにしましょう。

トランス脂肪酸を含む食品は?

加工油脂(マーガリンやショートニング)及びこれを原料とする食品に多く含まれます。

マーガリンは、ケーキ、マフィン、パン、ピザなどに使用され、ショートニングはサクサクとした食感を出す性質からクッキーやビスケットなどに多く使用されています。

その他、トランス脂肪酸を含む油を使用したフライ(フライドポテト、フライドチキンなど)、天ぷら、ドーナッツ、ポテトチップスなども外食産業で多く見られます。

食品別の平均含有量(100グラムあたり)は、ショートニングが13.6グラム、マーガリンが7グラム、ビスケット類が1.8グラム、ケーキ類0.71グラム、菓子パン0.2グラムとされています。

また、フライドポテト(Mサイズ)は3,37グラムにもなるそうです。

トランス脂肪酸を回避するためには、原材料名をきちんと見て、「マーガリン」「ショートニング」と書いているものや、「植物油脂」「植物性食用油」といった、何の油がきちんと明記されていないものは出来る限り避けるようにしましょう。



おわりに

普段何気なく食べていたものの多くにトランス脂肪酸が含まれていて驚いた方も多いのではないでしょうか。

絶対に口にしないというのは難しいですが、少し意識をして、ケーキを和菓子に変更する、ショートニングを含まないお菓子を選ぶなど他の食品に変えてみるだけでも、摂取量は減るものです。

 また、トランス脂肪酸のみならず、脂肪酸の摂り過ぎ自体も健康上の問題となります。自身の食事はどういったものを食べているかを出来る限り理解して、偏食や、栄養バランスの悪い食事にはならないように心掛けましょう。

関連リンク: バランスの良い食事 | 7大栄養素を身につけよう

この記事を書いた人
ライフミール栄養士
ライフミール栄養士

編集部

ライフミール所属の栄養士です。 私たちは、「正しく、美味しい食生活」を少しでも多くの方に送って頂けるように、まずは正しい判断基準を持つための基礎的な栄養学に始まり、楽しく興味を持って頂けるようなコンテンツの提供や、専門性の強い研究テーマまで幅広い情報を発信してまいります。