離乳食のスタート「はじめのひとくち」

大人になってもお母さんのおっぱいにしがみついて生きている大人はいないように、赤ちゃんはママからの栄養(ミルク)から、地球からの栄養(ミール)を頂くようになり「食の自立」ができるようになります。離乳食のスタートは、そんな子ども達の第一歩。パクッとお口が動き出す貴重な「はじめのひとくち」だと思います。



離乳食の基準

「そろそろ離乳食を始める時期かしら?」と感じた時、みなさんは「いつのタイミングが妥当か?」と、考えると思います。周りの子育て経験のあるご両親や、保育者、また育児書などでしょうか?しかし、離乳食の進め方については、まだ研究されている部分が多数あり、またその時代の多い病気の発症データなどを参考に変化しています。

日本では戦後に「離乳基本案1985年」がつくられ、「離乳の基本1980年」「改定離乳の基本1995年」と変わり、内容も曖昧であった離乳食の定義が決まり、子どもの個性を尊重した離乳食へと変化してきました。そして現在の日本では「授乳・離乳の支援ガイド2007年」を基準としています。

この「授乳・離乳の支援ガイド2007年」では「離乳食の開始の前に果汁をとる必要がない」ことが明記されました。これは、離乳食前に取ることで乳汁量が減り各種栄養素が不足してしまうことで栄養学的な意義が認められず、その部分の記載がなくなりました。もうひとつ、開始の時期も「生後5か月になった頃」から「生後5,6か月頃が適当である」と幅を持たせる表現に変わっています。

さらに「乳幼時期の肥満の心配はない」とされていた考えも、この時期の食生活の大切さが成人になってからの肥満や成人病を防ぐためにも「生活習慣病の観点から、この時期に健康的な食習慣の基礎を培うことも重要である」と、明記されるようになりました。

このように、その時代でこうした内容も変わってきています。そのため私たちは、正しい情報を知り、その上で余裕をもって子育てができるバランス感覚が大切です。

離乳食の開始の時期

産まれてから赤ちゃんは、すぐにお母さんのおっぱいを探します(探索反射)。そしてお母さんのおっぱいに吸いつきます(吸啜反射)。これは原始的に備わっている反射(原始反射)とよばれるもので、この反射が薄れていくと同時に自分の意志で口を動かす運動に変わり、自分で吸う行為(自立哺乳)となります。これらの時期がおおむね5、6か月頃とされているので、現在はこの時期を「離乳の開始」としています。

そして、それ以前の2か月頃に始まる「指しゃぶり」や4か月頃の「おもちゃなめ」はこの原始反射をなくしていくために大切な行為です。離乳が始まる前の段階としてゆっくり見守りながら、こんな様子が増えてきたら離乳食の開始を意識してみましょう。

離乳食開始のサイン

それでは、離乳食の開始の赤ちゃんからの具体的なサインをお伝えします。

① お母さんのおっぱいを探す行為が減ってくる。
② お口の周りを指でちょんちょんとした時に、すぐにパクッと吸い付く行為が減ってくる。
③ 舌をあまり出さなくなる。
④ 大人の食べ物をじっと見つめたり、口元を見つめたり、口を動かし食べたそうにしている。
⑤ 首の座りがしっかりして手で支えてお座りができるようになってくる。

検診などで医師や保健婦、栄養士、保育士に相談しながら、赤ちゃんとご家族の体調が良い時期にスタートしましょう。離乳食がスタートする前は、赤ちゃんとお母さまの生活リズムを整えていくことが大切ですね。



次回は 「02.はじめのひとくち の海外事情」 をお伝えいたします。

この記事を書いた人
松下 和代
松下 和代

栄養士・調理師・保育士・食品アドバイザー

食事は、「心のこもった温かい手で」をモットーに、栄養士取得後、包丁とギターを抱えて、児童養護施設に住み込みで働く。さらに、栄養士として実績をつむために、ミルク会社のメールマガジンの編集・栄養・保育の相談を担当して、栄養相談の実績をつむ。三人の子のママ。