IPA(イコサペンタエン酸)の効果と摂取上の注意点について
IPA(イコサペンタエン酸)は、エイコサペンタエン酸とも呼ばれEPA の略称が用いられることがあります。イコサペンタエン酸は鰯(いわし)や魬(はまち)など青魚の脂肪に含まれる不飽和脂肪酸の1つです。
イコサペンタエン酸は血液の健康に関与し、脳梗塞や心筋梗塞などの血栓症を予防したり、コレステロール値や中性脂肪を低下させ、生活習慣病を予防する働きがあります。
IPA(イコサペンタエン酸)の性質と働き
脂肪を構成している脂肪酸は、鎖状につながった炭素の数と結合によって飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類されます。飽和脂肪酸はバターやラードなど主に動物性の脂質に多く含まれ、不飽和脂肪酸は主に植物や魚の脂に多く含まれます。
不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分けられ、IPA(イコサペンタエン酸)は、二重結合を2つ以上持つ多価不飽和脂肪酸で、n-3系の脂肪酸に分類されます。
n-3系にはα-リノレン酸、DHA(ドコサヘキサエン酸)、IPAがあり、大豆油、しそ油、特にアマニ油など植物油に含まれるα-リノレン酸は体内でIPA、さらにDHAと変化します。
n-3系脂肪酸の摂取量が多いグリーンランドの人々は動物性脂肪の摂取量が多いにもかかわらず、心血管死亡率が比較的低く健康な高齢者が多いことで知られていました。そこで、n-3系脂肪酸には健康上の有益性があるためと考えられ研究が進められてきました。
IPAは血液の粘度を低下させ、赤血球の変形能を高めることによって血液を固まりにくくして脳梗塞や心筋梗塞などの血栓症を予防する効果があります。
また、HDL(善玉)コレステロールを増やし、LDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪を減らす働きもあり、血液をサラサラにしてくれます。高血圧の予防や改善に効果的です。
抗うつ治療と併用してIPAを投与した結果、うつ状態の改善が認められたり、認知症患者への投与で認知機能の改善を認めたという報告があり、うつ病や認知症の改善にIPAが有効と考えられています。
IPA(イコサペンタエン酸)を多く含む食品
可食部100gあたりに含まれるDHA/IPA
以下の順で記述します。
- 多く含む食品
- DHA / 含有量(mg)
- IPA / 含有量(mg)
- みなみまぐろ(トロ)
- 2700
- 1300
- はまち
- 1700
- 980
- ぶり
- 1700
- 940
- さんま
- 1700
- 890
- アトランティックサーモン
- 1400
- 850
- まいわし
- 1300
- 1200
- うなぎ
- 1100
- 580
- かつお(秋獲り)
- 970
- 400
- さわら
- 940
- 380
- 真鯛(養殖)
- 890
- 600
- さば
- 700
- 500
- 紅さけ
- 480
- 270
- あじ
- 440
- 230
日本食品脂溶性成分表(科学技術庁資源調査会編)より
IPA(イコサペンタエン酸)の摂取と食べ合わせ
厚生労働省ではn-3系脂肪酸のなかでIPA及びDHAは1g/日以上摂取することが望ましいとされています。
18歳以上の男女は1g/日が目標量で、妊婦、授乳婦の付加量については算定されていません。また、小児については成人の値を参考に魚を摂取する習慣を身につけることが望ましいとされています。
日本人の食事摂取基準(2010年版)で用いた平成17年、18年国民健康・栄養調査の結果では、日本人30~49 歳以上のIPA 及びDHA 摂取量は、0.32 g/日(男性)、0.23 g/日(女性)で目標値である1日1gには届いていません。
また、18 歳以上では魚で1日約90 g以上が望まれます。平成26年国民健康・栄養調査では成人の平均で1日74.5gの魚介類を摂取していることになっていますが、20~40代では55g 前後と魚離れが進んでいます。1日1回魚を摂取することを心がけましょう。
魚の油に含まれるIPAは、熱に強く酸化しやすいのが特徴です。刺身で食べるのがおススメですが、煮魚など火を通して調理する時も新鮮なものを選ぶようにしましょう。
また、抗酸化作用を持つビタミンC、ビタミンE、β-カロテンと一緒に摂取するのも良く、焼き魚にする際は魚から出る脂を逃さないように野菜を一緒に炒めたり、ホイル包みにするなど工夫をすると効率よく摂取できます。
関連リンク: ビタミンC | ビタミンE | βカロテン
IPA(イコサペンタエン酸)の過剰症、欠乏症
多く摂りすぎると下痢などが起こることがあります。
IPAには血圧を下げる働きがあるため、血圧降下剤を服用していると血圧が下がりすぎる恐れがあるので注意が必要です。また、抗血栓薬と併用すると紫斑や出血が起こる可能性があります。
食の欧米化によって肉中心の食生活になり、IPAが欠乏すると、血液が凝固しやすくなり動脈硬化など血管が詰まるリスクが高まります。また、血液中の中性脂肪やLDL(悪玉)コレステロールが増加すると考えられます。
IPA(イコサペンタエン酸)の関連キーワード
EPA/AA比
AAとはアラキドン酸のことで、EPA(IPA)と同じ多価不飽和脂肪酸の1つで、n-6系脂肪酸に区別されます。
アラキドン酸は主に肉、魚、卵など動物組織に含まれます。コレステロール値を下げる、免疫機能を調整する、血圧をコントロールする働きがありますが、取り過ぎると動脈硬化を引き起こしたり、アレルギー症状を悪化させることがあります。
EPAとAAの血中のバランス指標は「EPA/AA比」と呼ばれ、EPA/AA比が高い(血液中にEPAが豊富に含まれている状態)だと、動脈硬化になるリスクが低く、肉中心の食事など体内での脂肪酸のバランスが崩れると動脈硬化などのリスクが高まります。
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