もしもの時に!栄養士が伝えたい「備えておきたい水と食料」(2)
前回に続き、備えておきたい「食料」についてのお話です。
日本では地震や台風などの災害はあってもテロや戦争、ウイルス感染、ハイパーインフレなどはあまり起こりません。前者の災害の場合は、他の被災していない地域からの援助もあり「長期的な食料不足」には至りません。しかし、後者の場合には、生命を維持するために「長期的な食料が必要」となってきます。
備えておきたい「食料」
「食料」を備える際は、この「短期」「中期」「長期」の期間別に用意するものを考える必要があります。
短期:1日程度で移動のため、隔離された場合の食料
急な災害が来た時に、安全な場所に行くまでの「エネルギー補給、体力維持、移動」に便利な軽量さを目的とし、量が少なくてもカロリーが高く保存が良いものを準備しておきます。
(例:飴、チョコレート、バランス栄養食品、ゼリー飲料など)
→ これらは、災害用の防災バックに準備しておきます。
中期:1週間程度、被災地で快適に過ごす食料
安全な場所に移動できても、自宅でいつも通りの生活を送るまでの「エネルギー補給、体力維持、快適な生活」を送るために必要な食事を目的とします。
水や火や調理器具などがなくても加工しやすく、普段の食生活に近い種類の食べ物、身体的にも精神衛生的にも、健康が保てる食料。
(例:α米、インスタントラーメン、加熱機能付きのご飯パック、フリーズドライ食品、など)
→ 災害時でも丈夫で安全な場所にある食品庫に保管する。一部、防災バックにも。
長期:数週間~1か月以上で餓死をなくし食料不足に備える食料
長期にわたり、食料を確保するのが困難となった時に、長期間健康で、ストレスをためずに過ごすために必要な備蓄を目的とします。
量が多くなっても、賞味期限が長く場所をとらずに保存ができるもの。
(例:米、パスタ、乾麺、レトルト食品、カレールー、調味料、乾物、嗜好(しこう)品、サプリメントなど)
→通常の食品ストックで保管する。古いものから使いながら一定量を残して保管する。
栄養士からの「食料」のアドバイス
食料を準備する際に、栄養士としてアドバイスしたい点は、個々の体に合ったものを考えておくことだと思います。
理由は、食事は年齢、性別、生活スタイル、疾病の有無によって必要な食料が異なってくるからです。ご家族の属性を把握し、それぞれに見合った量と、内容を考えていきましょう。
小さなお子様のいるご家庭
赤ちゃんや小さなお子様がいるご家庭の場合、当然ミルクや離乳食の準備が必要になってきます。避難所では、離乳食の準備まで行っている場所は少なく、大人に向けての食料が支給されるケースが多いと思います。まずは、ご家族の食べ物は自分で準備する心がけでいましょう。
離乳食を手作りするご家庭では、あまり加工された離乳食を用意されていないと思います。加工食品は、調理者の具合が悪くなった時にも便利なので、月齢にあわせて買い置きしておくと良いでしょう。
その際は、水をそそぐタイプのものよりすでに調理加工されている瓶詰やレトルトパウチ食品が非常食としておすすめです。災害がおきずに保存しておく必要がなくなったら、利用してまた買い足して準備しておくと良いでしょう。
妊産婦のいるご家庭
妊娠中に気をつけてほしい点は、塩分・糖分をとりすぎて妊娠中毒症になってしまうことです。被災された時、支給される食事を見ると糖質が多く、塩分が多めの食事になってしまいます。また悪阻がある場合には、充満された避難所の臭いで気分が悪くなってしまうことも。
対策として・・・
塩分過多防止
青汁などの粉末飲料をご自分の体に合った野菜や食物繊維の摂取ができる保存食を用意しておくこと。
悪阻対策
好みの香りの良いお茶やリラックスできる食料を。
食物アレルギーのある方
食物アレルギーのある方は、配られる食事で病状が悪化し、体調不良になってしまいアナフィラキシーショックを起こしてしまうことがあります。これらを防ぐために、事前に準備しておきたいポイントをまとめました。
1) 災害時に、食物アレルギー方のための食料を支給してくれるネットワークに登録し、いざとなった時に救援物資が届くようにする。
2) 急な症状があった時に、周りの方に理解してもらえるように、アナフィラキシー対応ができる医師や看護師に相談しておく。
3) 疾病の状況がわかる手帳を用意しておく。
4) 緊急時に備えて、必要な食料を3日~10日分用意しておく。
5) 日ごろから近所の方たちと連携して、アレルゲンとなる食料に触れないですむように配給する時や食事の時など別室にいれるようにお願いする。
アレルギーの場合は最悪死に至るケースもあるので、日ごろからご近所の方や学校の先生、病院の医師や看護師、栄養士、市区町村の栄養士さんに相談をしておきましょう。
また日本小児アレルギー学会からアレルギーのお子様に向けてのパンフレットがダウンロードできます。ぜひご参考にしてください。
参照リンク: 災害時のこどものアレルギー疾患対応パンフレット(日本小児アレルギー学会)
避難場所での食事について気を付けるポイント
食事の食べ方を工夫してみよう
配給された食料の量が少ない場合は、ゆっくり噛んで空腹をみたします。可能であれば、水分で量を増して食事をしましょう。
カリウムや食物繊維の多い食品を補給しましょう
いざとなった時には、なかなか手に入りません。事前に保存可能な粉末の青汁や食物繊維のレトルト食品、コーンフレーク、ドライフルーツなどあると便利です。
特に、妊産婦や高血圧の持病のある方、塩分量が多くなりやすいので注意が必要です。
軽い運動やストレッチを行おう
狭い場所で同じ体性で長時間いて、さらに水分不足からエコノミー症候群を引き起こしやすくなります。簡単なストレッチや運動をしましょう。
虫歯予防にウエットティッシュを用意しましょう
お菓子や甘い食事による虫歯が心配されます。水が使えないと、歯を洗うのも大変なのでウエットティッシュを用意して口腔内のケアに気を付けましょう。
おわりに
さてここまでで、一般的に必要な水や食料のお話をさせていただきましたが、災害時には、たくさんの悲しい出来事や予測できない場面に遭遇し、いくら準備してもそれはいつもの生活とは異なります。
心と体が暖かくなる食事の事前の準備、あなたなりのひと工夫を持っていると良いですね。
参照リンク: 防災グッズの紹介(総務省消防庁)