フェニルアラニンの効果と摂取上の注意点について
フェニルアラニンは必須アミノ酸の1つで、肉類、魚類の食品中のタンパク質に多く含まれます。フェニルアラニンは興奮性の神経伝達物質のドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンの合成に関与しており、血圧を上昇させる作用があります。
神経伝達物質のバランスが崩れると、うつなどの原因となりますが、フェニルアラニンの摂取は現代病とも言われるうつ症状を予防、改善する効果があります。
フェニルアラニンの性質と働き
私たちの体の16~20%を占めるタンパク質は、20種類のアミノ酸から構成されています。
そのうち9種類(バリン、ロイシン、イソロイシン、リジン、スレオニン、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、トリプトファン)は必須アミノ酸と呼ばれ、体内で合成することができず、食事によって摂取しなければなりません。
フェニルアラニンは必須アミノ酸の1つで、非必須アミノ酸のチロシンと共に芳香族アミノ酸(AAA)に分類されます。
フェニルアラニンは、脳の神経細胞の間で情報の橋渡しをしている神経伝達物質を作るために欠かせないアミノ酸で、体内では酵素の働きによりチロシンとなります。
チロシンから興奮性の神経伝達ホルモンのドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンが生成されます。
神経伝達物質が分泌されると興奮状態や幸福感を覚え、神経を高揚させるので気分の落ち込みを改善したり、うつ症状の緩和にも効果があると考えられています。
フェニルアラニンには痛みを抑える効果があります。天然のフェニルアラニンから合成されたDL-フェニルアラニンは、リウマチや腰痛、偏頭痛などの慢性的な痛みを軽減させる鎮痛剤として利用されています。
また、代用甘味料であるアスパルテームはフェニルアラニンやアスパラギン酸を原料として生成されています。
代用甘味料とはスクロース(砂糖)の替わりに用いる甘味物質で、アスパルテームはスクロース(砂糖)の100~200倍の甘みがあります。使用量が少量で良いので、糖尿病や肥満対策に用いられています。
関連リンク: タンパク質
フェニルアラニンを含む食品
フェニルアラニンは、肉類、魚介類、豆類など様々な食品中のタンパク質に含まれています。
◇ 食品100gあたりの含有量
鰹節 3200mg
さば(焼き)1200mg
豚肉ヒレ(焼き)1600mg
鶏むね肉(焼き)1300mg
大豆 2000mg
高野豆腐 3000mg
納豆 870mg
きな粉 2000mg
小麦胚芽 1100mg
そば(乾) 690mg
そうめん(乾) 530mg
脱脂粉乳 1600mg
フェニルアラニンの摂取と食べ合わせ
成人の必須アミノ酸の推定平均必要量は、フェニルアラニン+チロシン(芳香族アミノ酸)で25mg/kg 体重/日、38mg/g たんぱく質としています。
体重60㎏の成人では1日に約1500mgが推奨される必要量となります。
血圧を上げる作用があるので高血圧や心臓病、妊娠中、授乳中、皮膚がんやフェニルケトン症の方にはフェニルアラニンの摂取は適していません。
ビタミンB6はタンパク質の分解や再合成に欠かせないビタミンで、神経伝達物質の合成にも必要となる成分なので一緒に摂取すると効果的です。他の栄養素とバランスよく摂取するようにしましょう。
関連リンク: ビタミンB6 | タンパク質
フェニルアラニンの過剰症、欠乏症
フェニルアラニンは様々な食品中のタンパク質に含まれており、安心な成分で摂りすぎても問題はないと考えられています。
しかし、血圧を上昇させる作用があるので過剰に摂取すると高血圧を招く恐れがあり、心臓病などのリスクを高める可能性があります。
フェニルアラニンは様々なタンパク質食品に含まれているので、動物性タンパク質や植物性タンパク質をバランスよく摂っていれば不足することはありません。
しかし、極端にタンパク質を制限した場合など、不足すると神経伝達物質のバランスが崩れ、気分の落ち込みが起こることがあります。
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フェニルアラニンの関連キーワード
芳香族アミノ酸(通称:AAA)
必須アミノ酸のフェニルアラニンと、非必須アミノ酸のチロシンが芳香族アミノ酸に分類されます。
肉類、魚、豆類、乳製品などタンパク質食品に多く含まれており、神経伝達物質の原料となって脳や神経の働きを活発にします。また、神経伝達物質の分泌を正常にし、うつ症状の緩和や不安感を改善する効果があります。
芳香族アミノ酸は肝臓で代謝され、他の臓器では芳香族アミノ酸を分解することができません。肝不全などの肝疾患では、芳香族アミノ酸の処理ができず肝臓の芳香族アミノ酸の取り込みが低下するので、血中芳香族アミノ酸濃度は上昇します。