ロイシンの効果と摂取上の注意点について
ロイシンは、必須アミノ酸の1つでBCAA(分岐鎖アミノ酸)に分類されます。筋肉組織で代謝され、強い筋肉タンパク質同化作用を持ち筋肉を強化する働きや、肝臓の機能を高める作用を持ちます。 またロイシンは、肉類や牛乳、チーズなど幅広い食品に含まれ、必須アミノ酸の中で1日の必要量が最大です。
ロイシンの性質と働き
私たちの体の16~20%を占めるタンパク質は、20種類のアミノ酸から構成されています。
そのうち9種類(バリン、ロイシン、イソロイシン、リジン、スレオニン、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、トリプトファン)は必須アミノ酸と呼ばれ、体内で合成することができず、食事によって摂取しなければなりません。
ロイシンは必須アミノ酸の1つで、バリン、イソロイシンとともに分岐鎖アミノ酸(BCAA)と呼ばれ、筋肉で代謝されます。
必須アミノ酸の中でもロイシンは筋タンパク質合成刺激が強いことが知られています。
ロイシンが直接筋肉細胞に働き、筋タンパク質合成を促進させて筋肉を強化する作用があり、高齢者の筋肉の萎縮を改善するという報告もあります。
β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸(HMB)は食事から摂取されるロイシンによって体内で生成される成分で、筋肉におけるタンパク質合成を促進する働きをします。
ロイシンが筋肉を強化する働きを持つことは比較的知られていますが、これはロイシンの摂取によって体内でHMBが生合成されるためだと考えられています。
しかし、ロイシンを摂取しても約5%しかHMB に変換されず、代謝産物であるHMBを直接摂取する方法も注目されています。
また、ロイシンは、肝機能の向上を促す働きを持っています。
肝臓は栄養素を分解、合成する代謝機能や、細胞から集められた老廃物の分解など重要な働きをします。ロイシンを摂取することによって肝臓の働きを高め、肝臓への負担を減らすことにつながります。
ロイシンを多く含む食品
鶏肉、豚肉、牛肉など肉類、魚、牛乳、プロセスチーズなどに多く含まれます。
これらの食品には他のアミノ酸も含まれているため、アミノ酸のバランスが偏ることはありませんが、他の食材とバランス良く摂取するようにしましょう。
ロイシンの摂取と食べ合わせ
どのようなアミノ酸がどれだけ必要かと示したFAO/WHO/UNU(1985)が発表したアミノ酸評価点パターンによると、ロイシンは成人では19mg/gタンパク質としています。
9種類の必須アミノ酸のバランスのことをアミノ酸スコアといいます。それぞれのアミノ酸が全て必要量を満たしていれば、アミノ酸スコア100となります。
100以下のものを制限アミノ酸といい、最も低いものを第一制限アミノ酸と呼びます。
アミノ酸全体の働きは、最も低いアミノ酸のレベルに制限されるため、アミノ酸の摂取はバランスがとても大切です。必須アミノ酸は全ての種類が必要量を満たしていることが重要で、1つでも不足すると体内での利用効率が低下します。
牛乳、卵、肉類はアミノ酸スコアが100で非常にアミノ酸バランスの良い食品です。
ピーマン、じゃがいもはアミノ酸スコアが68、みかんが50、トマトが48で第一制限アミノ酸はロイシンです。
ロイシンを多く含む食品と同時に食べるようにし、主食、主菜、副菜の揃ったバランスのよい食事を心がけましょう。
ロイシンを摂取する際はBCAAであるバリン、イソロイシンと一緒に摂取すると効果的です。
ロイシンの過剰症、欠乏症
幅広い食品に含まれているため、通常の食生活では不足することありませんが、特定のアミノ酸を多く摂りすぎるとアミノ酸の不足がない状態にもかかわらず、かえってアミノ酸不足の状態が出現したと体が錯覚することがあります。
これをアミノ酸インバランスと呼び、免疫機能の低下や体重の減少を招くことがあります。
メープルシロップ尿症(分岐鎖ケト酸尿症)においては痙攣や神経的作用を生じることがあるので分枝鎖アミノ酸を制限して、血中のロイシンの濃度を調節します。また、妊娠中・授乳中の大量摂取は控える必要があります。
※メープルシロップ尿症:先天性代謝異常症のひとつで体内に分枝鎖アミノ酸とケト酸が蓄積され、尿や汗がメープルシロップのようなにおいを呈します。哺乳開始後数日で哺乳力の低下、元気がない、機嫌が悪い、嘔吐などが見られます。
ロイシンの関連キーワード
BCAA(分岐鎖アミノ酸)
Branched Chain Amino Acidsの頭文字で、構造上、分岐が見られる分岐鎖アミノ酸です。必須アミノ酸であるバリン、ロイシン、イソロイシンがこれにあたり、体内で合成できないため、食べ物から摂取する必要があります。
食物中の必須アミノ酸の中で、BCAAが占める割合は約50%と言われています。筋肉の成長と維持に欠かせないアミノ酸で、スポーツ選手にとって重要なアミノ酸です。筋たんぱく質に含有される必須アミノ酸のうち約35%をBCAAが占めています。
BCAAは肝臓ではほとんど代謝されず、筋肉で代謝されます。筋肉繊維を構成するタンパク質の主成分で、筋肉量の維持や筋力の増強に効果があります。
運動中のエネルギーとなり、運動後の筋疲労を回復や筋肉の修復の働きもあるため運動の前後に摂取するのが効果的です。
また、肝不全の患者においてはBCAAの血中濃度が低く、BCAAが肝不全に伴う脳症の発症予防に利用されています。
BCAAについて詳しくはこちらをお読みください
筋肉のエネルギー代謝や合成などに関与するBCAA(分岐鎖アミノ酸)とは?
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