「ベビーフードダイエット」から考えるダイエットブームの背景

1日2食をベビーフードに置き換えて痩せる「ベビーフードダイエット」が巷で話題となっています。しかし、「ベビーフードは誰の食べ物だ」と反対意見をあげる声もあり、物議をだしています。

今回、この「ベビーフードダイエット」について栄養士の目線からこのダイエットの問題点を考えてみます。

「ベビーフードダイエット」から考えるダイエットブームの背景

ダイエットブームが巻き起こす社会現象

これまで1日3食のうち、数回の食事を又は一部を「〇〇に置き換える」という「置き換えダイエット」は数多くありました。

その内容は、リンゴ、キャベツ、バナナ、ブロッコリー等の野菜や果物。卵、ささみ、ヨーグルト、おから、豆腐などのたんぱく質。こんにゃく、ところてん、しらたきなどの低カロリー食品。例をあげると、実に多くの形で「置き換えダイエット」が流行りました。

そして、こうしたダイエットが話題になると「店頭からその食品が消える」という現象もありました。

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痩せたいのであれば「食べるカロリーを減らせば良い」のか?

そもそも体重だけを減らしたければ、1日の摂取カロリーを減らせば実現します。

そのため、ダイエット方法には「食事の摂取カロリーを減らす方法」と「運動をして消費カロリーを増やす方法」のどちらか又は、一方を行うものがあります。

しかし、長年しみついた食習慣や生活習慣は、なかなか変えるのが難しいものです。

その中で、この「置き換えダイエット」は、1日の食事内容の一部を「何かの食品」に置き換えるだけで、毎食の「栄養バランス」を意識する必要もなく摂取カロリーが減らせる簡単なダイエット方法です。

頑張って運動をする必要もなく、バランスを考えて食事する必要もなく、"痩せる" ことができるためこの「置き換えダイエット」を実行する人が増えています。


最近では「置き換えダイエット」も、1食を単品の食材で置き換える方法から、栄養価が高く複数組み合わせても手軽に作れる「スムージー」や「グラノーラ」「酵素ドリンク」「豆乳甘酒」など、1部を置き換え利用する方法が流行しています。

しかし食べるカロリーを減らすだけのダイエット方法は、その食事内容によっては栄養面で偏りが起きて体調不良が起きます。

また、運動をしないで体重を落とせば筋肉量が減ってしまいます。そして筋肉は、脂肪よりも重さがあるため見かけは同じでも筋肉のある方の方が体重は重くなります。

なので、単に食事のカロリーを減らして体重の変化だけをおっていくダイエット方法では他の部分での問題面も生じてきます。


ただ単に「食べるカロリーを減らせばよい」とダイエットを計画するのではなく、食事は、やはり一食の食事をバランスよく1日3食、腹八分目にしましょう。美味しく、楽しく続けていける食習慣と適度な運動を習慣とするのが大切です。

「ベビーフードダイエット」が問題となった背景

それでは数ある「置き換えダイエット」の中でも今回、この「ベビーフードダイエット」に大きく反対意見が出たのはどんな背景があるのでしょうか?


この「ベビーフードダイエット」がテレビで紹介された後に、インターネット上で「赤ちゃんの食べ物を奪うな」や「ベビーフードが無くなったら本当に困る」と等、ベビーフードをダイエット食にすることに対して、離乳期のお子様をもつ方々から反対意見がありました。

近年、ライフスタイルの変化から、両親共に働いているご家庭も多くなりました。

昔のように「離乳食はできるだけ手作りが良い」と頑張ってストレスをため込むよりも、安心で手軽に利用できるベビーフードの活用も良い選択肢の一つです。

そのため、家事や育児に加え、仕事の負担も増えたご家族にとって、赤ちゃんの大切な栄養源である「ベビーフード」が、この一瞬の流行である「ベビーフードダイエット」の流行で、本当に使いたい方が利用できなくなってしまうのは問題です。

ベビーフードを使う時期の赤ちゃんの中には「このメーカーの、この味でないと気に入らない」というケースもあります。

さらに、災害時や緊急時(例えば親の突然の病気などで)に、赤ちゃんのためのベビーフードは大切な保存食となります。

メーカー側も販売数や店頭での仕入れ個数などは、ある程度予測して用意していますので、突然大量に販売数が増えると嬉しい反面間に合わなくなるのが現状でしょう。


このように、単に流行りでダイエット方法を試してみる前に、食べ物のおかれた背景も考えてみる必要があると思います。

日本ベビーフード協議会からベビーフードの定義

今回の件から各メーカー様にお伺いしたところ、

「日本ベビーフード協議会」の「ベビーフードの定義を、消費者の皆様にきちんと認識したうえで、ベビーフードを利用して頂きたい」との意見を頂きました。

「日本ベビーフード協議会」は、日本のベビーフードを製造・販売している企業が集まり運営している団体です。日本でのほとんどのベビーフード会社が、こちらの団体に加入しています。

そしてこちらの「日本ベビーフード協議会」のホームページより、

離乳食とは、離乳のための食事すべてを指しているのに対し、ベビーフードとは、赤ちゃんの離乳を手助けする目的で市販されている加工食品のことをいいます。

日本ベビーフード協議会では、次のように定義しています。

「乳児」および「幼児」の発育に伴い、栄養補給を行うとともに、順次一般食品に適応させることを目的として製造された食品をいう(*1)

赤ちゃんの食べるものだから、安全性はもちろんのこと、徹底した安心感の追及や、きめ細やかな機能性への配慮がベビーフード製品における最大の課題となります。

(*1)…日本ベビーフード協議会 自主規格において、「乳児」とは、1歳未満の児をいい、また「幼児」とは、生後1歳から1歳6ヵ月頃までの児としています。


「日本ベビーフード協議会」公式ホームページより引用

このように、食品には目的や用途に合わせて作られているものがあります。

利用する方々の背景を考え、もう一度「ベビーフードは大人のための食事ではなく、乳幼児のための食事である」という点をしっかり認識しましょう。

関連ページ:赤ちゃんの離乳食の必要性について

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この記事を書いた人
松下 和代
松下 和代

栄養士・調理師・保育士・食品アドバイザー

食事は、「心のこもった温かい手で」をモットーに、栄養士取得後、包丁とギターを抱えて、児童養護施設に住み込みで働く。さらに、栄養士として実績をつむために、ミルク会社のメールマガジンの編集・栄養・保育の相談を担当して、栄養相談の実績をつむ。三人の子のママ。