イソフラボンの効果と摂取上の注意点について
イソフラボンは主に大豆の胚芽部分に多く含まれるポリフェノールの一種。 女性ホルモンのひとつであるエストロゲンと似た作用を持ち、ホルモンバランスを整え、更年期障害の改善、閉経後に起こる骨粗しょう症の予防に役立ちます。 また、大豆イソフラボンは抗酸化作用を持ち、血液中に増えすぎたコレステロールを低下させ、動脈硬化など生活習慣病の予防にも効果があります。
イソフラボンの性質と働き
イソフラボンは大豆の胚芽部分に豊富に含まれるポリフェノールの一種で、フラボノイド系に属します。
大豆イソフラボンは、化学構造が女性ホルモンのひとつであるエストロゲンに似ているため、植物エストロゲンとも呼ばれます。
女性は50歳前後に卵巣の機能が低下し、エストロゲンの分泌が減少することが原因となって起こる内分泌失調及び、自律神経失調の症状を更年障害といいます。
主な症状として、体のほてり、大量の汗、のぼせ、倦怠感、動悸、イライラ、不安感などの症状が現れます。
女性ホルモンの減少を予防することはできませんが、イソフラボンはエストロゲンと似た働きをして、更年期に起こる様々な症状を緩和する効果があります。
また、閉経後はエストロゲンが減少し骨吸収のスピードが速まると骨形成が追い付かず骨がもろくなります。これを骨粗しょう症と呼び、イソフラボンは骨からカルシウムが溶け出すのを抑制し骨粗しょう症を予防します。
大豆イソフラボンのひとつであるゲニステインは強い抗酸化作用を持っています。活性酸素を中和し、過酸化脂質の発生を抑制してLDL(悪玉)コレステロールを低下させ、動脈硬化の予防につながります。
欧米に比べ、大豆の消費量が多いアジア諸国の女性の方が乳がんの罹患率が低いという調査結果もあり、大豆イソフラボンは乳がんの予防効果があると考えられています。一方、乳がん発症や再発のリスクを高める可能性も考えられ研究段階にあります。
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イソフラボンを多く含む食品
原料大豆の種類や食品の製造方法などによってその含有量は異なりますが、大豆製品に多く含まれます。 (大豆イソフラボンアグリコンとしてmg/100g)
食品名(検体数) | 含有量 | 平均含有量 |
---|---|---|
大豆(11検体) | 88.3~207.7 | 140.4 |
煮大豆(3検体) | 69.0~74.7 | 72.1 |
揚げ大豆(1検体) | 200.7 | 200.7 |
きな粉(2検体) | 211.1~321.4 | 266.2 |
豆腐(4検体) | 17.1~24.3 | 20.3 |
凍り豆腐(1検体) | 88.5 | 88.5 |
おから(1検体) | 10.5 | 10.5 |
金山寺みそ(1検体) | 12.8 | 12.8 |
油揚げ類(3検体) | 28.8~53.4 | 39.2 |
納豆(2検体) | 65.6~81.3 | 73.5 |
味噌(8検体) | 12.8~81.4 | 49.7 |
醤油(8検体) | 0.7~1.2 | 0.9 |
豆乳(3検体) | 7.6~59.4 | 24.8 |
厚生科学研究(生活安全総合研究事業)食品中の植物エストロゲンに関する調査研究(1998)より |
イソフラボンの摂取量と食べ合わせ
イソフラボンは必須の栄養素とはされていません。食品安全委員会では大豆イソフラボンの安全な一日摂取目安量の上限値は、大豆イソフラボンアグリコンとして70〜75mg/日と設定されています。
これを食品に置き換えると、豆腐1丁(300g)、納豆では約2パック(1パック50g)、豆乳ではコップ1杯半(300g)が目安となります。
サプリメントなど特定保健用食品としての、大豆イソフラボンの一日上乗せ摂取量の上限値は30mg(大豆イソフラボンアグリコン換算値)とされ、食事以外の摂取上限量が30mgということです。
大豆イソフラボンをサプリメントとして摂取するより、大豆食品を摂取した方が理想的な食生活に近づくため、一つの成分に偏ることなく色々な食品をバランスよく継続して摂取するようにしましょう。
イソフラボンは骨粗しょう症の予防に役立つと前述しましたが、骨を作るカルシウムの摂取も大切です。閉経後の女性においてはホルモンの影響で骨量が減少しやすくなるので、大豆製品と共にカルシウムを多く含む食材も摂取するようにしましょう。
関連リンク: カルシウム
イソフラボンの摂取上の注意
前述した通り、イソフラボンの安全な一日摂取目安量の上限値は、大豆イソフラボンアグリコンとして70〜75mg/日です。
豆腐や納豆など日常的に摂取できていれば必要なイソフラボンは摂れていると考えられます。過剰摂取は女性ホルモンの働きに影響を及ぼす可能性も危惧されているため、サプリメントを過剰に摂る、水の代わりに豆乳を大量に飲むなど極端に摂りすぎないようにしましょう。
妊婦及び子供においては、特定保健用食品として日常的な食生活に上乗せして摂取することは推奨できないとされています。サプリメントを摂取するのは避け、大豆や大豆製品から摂取するようにしましょう。
イソフラボンは女性ホルモンと似た働きをするため、前立腺がんや乳がんと診断された場合は自己判断で摂取せずに主治医と相談する必要があります。
イソフラボンの関連キーワード
イソフラボンアグリコン
大豆イソフラボンの多くは糖が結合した状態で存在し、イソフラボン配糖体(グリコシド)と呼ばれ、ダイジン、ゲニスチン、グリシチンがあり伝統的な大豆発酵食品中に含まれます。
低吸収型と呼ばれるように、イソフラボンのまわりに糖がついていて、腸内細菌で糖が分解されないと体内に吸収されず吸収までに6~8時間かかるとされています。
腸内細菌の作用等により糖部分が分離したものはイソフラボンアグリコンとなり、それぞれダイゼイン、ゲニステイン、グリシテインと呼ばれ腸管から吸収されます。
高吸収型と呼ばれるように、糖が外れた状態であるため、腸内細菌の働きに関係なく胃や小腸ですみやかに効率よく吸収されます。