「妊娠時の食生活」で気をつけたい栄養のこと
妊娠中は、お母さんの健康と、赤ちゃんの発育にとって大切な時期です。 栄養が偏っていたり、不足したりすると、赤ちゃんにもお母さん自身にも悪影響があります。赤ちゃんに関する食事のポイントを押さえて、お母さん自身の食生活を見直して、適切な食生活を目指しましょう。
妊娠時の食事概要
ポイント1 | 妊娠中は母子の健康維持を意識すること |
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ポイント2 | 赤ちゃんの発育に合わせて摂取エネルギーを増加させる |
ポイント3 | 過食、偏食、欠食を避け、栄養バランスの良い食事をすること |
1日に必要なエネルギー | 通常時に必要な1日のエネルギー量に、妊娠初期+50Kcal / 中期 +250Kcal /後期 +450Kcal が目安 |
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摂取したい栄養素 | タンパク質、カルシウム、鉄、葉酸 |
注意・避けたい食物 | メチル水銀、カフェイン、ビタミンA 生ハム、スモークサーモン、加熱殺菌していないナチュラルチーズなど(リステリア食中毒)、飲酒、喫煙 |
関連リンク: タンパク質 | カルシウム | 鉄 | 葉酸 | カフェイン | ビタミンA
1日に必要なエネルギー
妊娠中は胎児の発育などのために、これまで摂っていた摂取エネルギー量に付加量を追加したカロリーが必要となります。
基本のエネルギー量は年齢や身体活動レベルにもよりますが、1800Kcalを目安にし、妊娠初期で+50Kcal、妊娠中期で+250Kcal、妊娠後期で+450Kcalです。
50Kcalは8枚切りの食パン一枚ほど、クッキーなら1枚程度なので妊娠前とあまり変わりません。250Kcalはごはん茶碗1杯程度です。
妊娠中は、子宮や胎盤などの様々な機能が作られ、ホルモンの影響で脂肪がつきやすくなるため、体重が増加します。しかし、過度な体重増加は妊娠高血圧症候群を発症し、お産に時間がかかるなどのリスクを招くため、体重の管理が必要です。
妊娠全期間を通しての推奨体重増加量は、非妊娠時のBMIにより異なります。BMIが18.5未満の場合は9~12kg、18.5~25.0未満の場合は7~12kg、25.0以上の場合は主治医との個別対応が必要です。
妊娠時に摂取したい栄養素
バランスのよい食事を取ることを前提に、妊娠中に積極的に摂取したい栄養素があります。
関連リンク: バランスの良い食事
カルシウム
妊娠中に特別多くとらなくてはいけない栄養素ではありませんが、胎児の骨や歯を作るために必要となります。不足すると母体の骨に蓄積されたカルシウムが使われるため骨密度が低下する可能性があります。1日に必要な量は650mgです。
牛乳(コップ1杯200mlあたり約220mg)やヨーグルト(1個100gあたり120mg)はカルシウムの吸収率がいいので積極的に食事に取り入れましょう。
カルシウムを多く含む食品:乳製品、小魚、大豆製品、海藻類など
関連リンク: カルシウム
鉄
妊娠中は体内の血液量が増加し、さらに赤ちゃんや胎盤を成長させるためにより多くの血液が必要となる為、鉄欠乏性貧血になることがあります。そのため、妊娠初期は+2.5mg、妊娠中期・後期には+15.0mgの付加が必要とされ、8.5mg~21.0mgが推奨量です。
レバーやカツオ、あさりなどの動物性食品はヘム鉄を多く含み吸収率が高いです。しかし、レバーはビタミンAを多量に含み、妊娠初期のビタミンAの過剰摂取は奇形のリスクが高まる可能性があります。焼き鳥1本でも過剰摂取となりますので注意が必要です。
逆に植物由来の非ヘム鉄は障害の心配はありません。鉄を多く含む小松菜やほうれん草などはビタミンcと一緒に摂取すると吸収率がアップします。
鉄を多く含む食品:レバー、かつお、あさり、ひじき、小松菜、ほうれん草
関連リンク: 鉄 | ビタミンA | ビタミンC
葉酸
妊娠の1ヶ月前~妊娠3ヶ月までに葉酸を摂取していると、胎児の神経管閉鎖障害のリスクが減ることが報告されています。非妊娠時の推奨量240μgに+240μgの付加が必要とされています。
*葉酸を多く含む食品:アスパラ、枝豆、オクラ、ブロッコリー、納豆、いちご
関連リンク: 葉酸
妊娠時に注意したい栄養素
水銀
魚はω3脂肪酸を豊富に含み、特にDHAは神経組織の構成成分となるため、妊娠中には積極的に摂取したい食品です。しかし、魚の種類によっては水銀を多く含むものもあり、大量に摂取すると胎児に影響を与える可能性があります。
マカジキ、クロムツ、キンメダイ、メカジキ、クロマグロ(本マグロ)、メバチマグロなどは水銀を含むので、一度に大量に食べないようにしましょう。
関連リンク:厚生労働省 妊婦の方への情報提供「お魚について知っておいてほしいこと」
・生ハムやスモークサーモン、加熱殺菌していないナチュラルチーズ(カマンベールチーズやブリーチーズなど)、肉や魚のパテなど
妊娠をしていると、リステリアという細菌による食中毒にかかりやすくなります。リステリアに感染した場合、インフルエンザ様の症状が出ることが多いですが、無症状や症状が軽い場合もあります。しかしそのような場合でも、胎盤を通して胎児に感染しているため、流産や死産となる場合があります。
主な原因食は、特に乳製品および食肉加工品,調理済みで低温保存する食品などが原因とされていますので、特に注意しましょう。
関連リンク
「妊産婦のための食生活指針」(厚生労働省発表 平成18年2月1日)