途上国において”痩せ”と”肥満”が存在する栄養不良の状況と原因
「途上国で栄養問題を抱えている人」というと、栄養の足りていない痩せ細った子ども達が思い描かれがちです。しかし今、途上国で起こっているいくつかの大きな栄養問題の中に、肥満が挙げられているということを今回は紹介したいと思います。

二重負担と呼ばれる「痩せと肥満」
現在、世界的に肥満人口が急激に増加しています。多くの開発途上国では栄養の不足と栄養の過剰、痩せと肥満の二重の問題を抱えています。
この、同一集団内に低栄養と過剰栄養が同時に存在する状態を「二重負担」と呼びます。
低栄養は子ども達の成長を妨げ、最悪の場合死に至らしめる一方で、過剰栄養は将来的に糖尿病や心・血管疾患などを引き起こす原因となる恐れがあります。
原因と対策は?
開発途上国における、子ども達の急激な体重増加には、都市化による生活習慣の変化や女性の労働市場への参入、カロリーの高い加工食品の消費量増加などの要因があるとされています。
肥満といえば、先進国だけの問題かと思いきや、実は開発途上国も含めた世界中の国々が直面する深刻な問題なのです。
また、多くの途上国では急性栄養不良対策が急務と考え、政策的に国家戦略として炭水化物や脂質を中心に国民へ食事指導・食事提供をしてきたという歴史が現代にまで影響しているとも言われています。
※急性不良については、こちらの記事を御覧ください。
日本も同じ課題がある
実は、我が国日本でも低所得者ほど栄養バランスが穀物に偏る傾向があると言われています。
厚生労働省は2014年の国民健康・栄養調査の結果(*1)から所得別に栄養状態を分析したところ、所得が低い家庭は、高い家庭に比べて食事が米やパンなどの穀物に偏っていて、栄養バランスが欠けている傾向が出ています。

(*1) 参照:平成26年「国民健康・栄養調査」の結果(厚生労働省)
次回は、途上国と日本の肥満課題の原因にはどのような違いがあるのか、世界の肥満事情について説明したいと思います。
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