【だし(出汁)のおさらい①】 だしの種類と特徴
うま味は”UMAMI”として世界でも注目が集まっています。うま味を抽出した液体であるだしは日本料理に特色を与え、食生活の基本を担ってきました。だしがなくても生きてはいけますが、日本料理のおいしさは、だしなしでは語れません。
前編ではそれぞれの素材の種類と特徴をおさらいしましょう。
- ▽この記事は二部構成となっています
- 【だし(出汁)のおさらい①】 だしの種類と特徴
- 【だし(出汁)のおさらい②】 うま味成分と相乗効果

だしの定義
だしという言葉は、「だし汁」の略称とされ、「鰹節、昆布などを煮出して、料理のうまさを増すのに使う汁」と定義されています。そして一般的には、素材からうま味成分を中心とした呈味(ていみ)物質を抽出した液のこと、広義にだしと呼んでいます。
現在では乾燥させた素材からうま味物質を抽出することで、他の素材の本来持っている味をより引き立てるという手法が確立されており、この調理方法は日本で独自に発達したといわれています。
だし素材の種類と特徴
和風だしとして一般的に使われているだしの天然素材は昆布、鰹節、干し椎茸、煮干しの4つです。以下にそれぞれの種類と特徴を挙げていきます。
昆布類

昆布は褐藻(かっそう)類に属する海藻で、日本では北海道および東北北部沿岸域に分布します。
生育環境によって品質には大きな違いがあり、形状、採取時期、場所など様々な基準で区分されます。
表1 主な昆布の種類と特徴
種類 | 標準和名、学名 | 形態 | 用途など |
---|---|---|---|
真昆布 | マコンブ | 葉は帯状または幅広い線状、革質で、黒褐色 | だしは清澄で上品、まろやか。塩昆布、昆布じめ、おぼろ昆布などに用いられる。 |
利尻昆布 | リシリコンブ | 葉は帯状、または幅広い線状革質で硬く、乾燥すると黒みを帯びる | だしは塩味がかって、香りがよい。京都では椀物、湯豆腐、千枚漬けなどに用いる。 |
三石昆布(日高昆布) | ミツイシコンブ | 葉は帯状でせまくて長い、肉質がやわらかい | だしは磯っぽい風味で、うま味のあるもの。煮物用(昆布巻き、佃煮、惣菜用)。関東以北で多用。 |
羅臼昆布ほか | オニコンブ | 葉は帯状、葉幅が広い、肉薄 | だしの色は黄色みが強く、うま味と酸味が特徴。酢昆布などに用いられる。富山地用で多用。 |
細目昆布 | ホソメコンブ | 葉は笹の葉状、革質で硬い、黒色だが、切り口は一番白い | 歴史的には最も古い種類。加工用(とろろ、切り昆布、昆布茶など)。 |
長昆布 | ナガコンブ | 葉は細長い、灰色がかった黒色、肉質はやわらかい | 加工用(昆布巻き、佃煮、惣菜、切り昆布など)。沖縄で多用。 |
かつお節類

かつお節は、食用としての利用法、原材料、形態、削り原料などによりさまざまに分類されます。有名なものに薩摩節、伊豆節、土佐節があります。ここではカビ付きとカビなしの違いでの分類をご紹介します。
茶色い色のものがカビ付きで、黒っぽいものがカビなしのものになります。カビ付きの茶色いものが『枯節(かれぶし)』、カビなしの黒っぽいものが『荒節(あらぶし)』という名前なので、パック品でも“かれふし”という名前がついているかどうかが見分けるポイントです。
表2 かつお節のカビありとカビなしの違い
種類 | 見た目 | 特徴 | 用途など |
---|---|---|---|
枯節 | 茶色、カビ付き | こした後も透明。香りがふくよかでまろやか。うま味が強く、すっきりとした上品な味。 | お吸い物やおひたし、薄味の煮物や茶碗蒸しなど。 |
荒節 | 黒っぽい色、カビなし | こした後少し白濁。魚臭の残る、少しこもった香り。うま味は控えめ、魚の風味は強いが味が少しぼんやり。 | 枯節に比べ、値段が手頃なため普段使いに良い。 |
表3 かつお節以外の節類のだし
種類 | 魚 | 特徴 |
---|---|---|
まぐろ節 | キハダマグロ | 色を付けたくない上品な椀だしや添え物用の糸削りに用いる。 |
そうだ節 | ソウダガツオ | 濃厚で色のついたこいだしになる。麺類に用いる。 |
さば節 | ゴマサバ | 雑味が少なくあっさりしているが、コクのある濃いだしがとれる。 |
むろ節 | ムロアジ | 香りはさば節に似ているが味はまろやかでさっぱりしている。 |
干し椎茸

干し椎茸はしいたけを天日もしくは火力乾燥させたもので様々な呼称がありますが、ここでは大きく二つに分けた種類について説明します。
表4 主な干し椎茸の種類と形状
種類 | 形状 |
---|---|
どんこ(冬菇) | かさは5〜6部開きで、厚肉、ひだは淡黄色 |
こうしん(香信) | かさが6部開きから全開のもの |
煮干し類

煮干しは、広義では魚介類を煮熟して乾燥させたものとされ、一般的にはカタクチイワシやマイワシなどの煮干しを指すことが多いです。「いりこ」とも呼ばれる。
煮干しだしはかつお節だしと比較して、酸味が弱く、生臭みが強いため、味噌汁や惣菜用のだしとして多く利用されます。
表5 主な煮干し類の形状と特徴
種類 | 形状 | 特徴 |
---|---|---|
カタクチイワシ | 上あごが下あごより突出し、口が裂けたように見える | 最も多く生産されている代表的な煮干し。だしは味が濃く、まろやかでこくがあり上品。 |
ウルメイワシ | 円形で、尾びれが小さい | 脂質が他のイワシに比べ少ない。だしは、くせがなく甘みがあり、淡白。 |
マイワシ | 平たい | 脂肪含量がイワシの中でも高い。だしは、カタクチイワシのだしに比べると味が薄く、あっさりした丸みのある味わいがある。 |
まとめ
主な和風だしの素材の種類と特徴をまとめましたが、気になるものはありましたか?天然だしは栄養上の価値も高く、奥深い優しい味わいがあり食卓も豊かになります。まずは扱いやすいものや手に入れやすいものから、料理に取り入れてみましょう。
後編ではさらにうま味成分や海外のだしについてご紹介します。
- ▽この記事は二部構成となっています
- 【だし(出汁)のおさらい①】 だしの種類と特徴
- 【だし(出汁)のおさらい②】 うま味成分と相乗効果