コリンの効果と摂取上の注意点について
コリンは細胞膜や神経組織を構成するレシチンや神経伝達物質のアセチルコリンの材料となります。レシチンは、細胞膜を作り、血管の内壁や肝臓にコレステロールや脂肪がたまらないように働きます。また、アセチルコリンには血管を拡張して血液を下げる働きがあります。このため、コリンには動脈硬化や脂肪肝、高血圧の予防効果が期待されています。医薬品として、栄養補給等を目的とした滋養強壮薬などに使用されています。
コリンの性質と働き
コリンは、ビタミンBに類似した水溶性ビタミン様物質に分類され、人間の体内においてアミノ酸のセリンから生合成されます。
ビタミン様物質とは、体内においてビタミンと似た重要な働きをしますが、体内で合成でき、欠乏症が起こらないため、ビタミンと区別されているものの総称です。
一般にヒト及び哺乳動物において必ずしも栄養素として外部から摂取する必要がなく、その溶解性から水溶性と脂溶性に分類されます。
コリンは、かつては水溶性ビタミンに分類されていましたが、現在は水溶性ビタミン様物質として分類されています。
関連リンク: ビタミン様物質
コリンは神経伝達物質であるアセチルコリンや、リン脂質であるレシチンなどの成分となります。
アセチルコリンには血管を拡張して血圧を下げる作用があります。
血液中のコレステロールが増加し、コレステロールが血管に付着するなどして血液の流れを悪化させると動脈硬化が起こる原因となります。
レシチンには血管壁へのコレステロールの沈着や肝臓への脂肪の蓄積を抑える効果があり、動脈硬化や脂肪肝、高血圧の予防につながります。
食品中にはホスファチジルコリン(レシチン)の構成成分として多量に含まれ、小腸から吸収されます。
卵黄の脂質に由来する成分に卵黄コリンがあり、アルツハイマー病に伴う認知障害及び記憶障害に対する効果が期待されています。
アルツハイマー病に伴う症状の一部はアセチルコリンの合成や利用が減少したためと考えられており、治療薬としてアセチルコリン分解酵素の活性を抑制して神経伝達を促進するものがあります。
関連リンク: 脂質
コリンを多く含む食品
食品ではレバー、卵、大豆、牛肉、豚肉などに多く含まれます。
食品100gあたりのコリン(ホスファチジルコリン)含有量は、
◆卵黄 630mg
◆全卵 240mg
◆鶏レバー(茹で) 210mg
◆牛肉赤身(焼き) 91mg
◆大豆(生) 65mg
◆枝豆(茹で) 46mg
◆ブロッコリー(茹で)21mg
コリンの摂取と食べ合わせ
コリンの摂取量は厚生労働省では定められていませんが、1日あたり300~1200mgで一般的には300mg前後を摂取します。摂取量の上限は成人1日あたり3500mgです。
※サプリメント事典第3版 蒲原聖可著 平凡社 2010より
卵黄コリンにおいては、ビタミンB12との併用でアルツハイマー病の予防や脳機能の改善に対する効果が期待されています。
また、コリンと同様にリン脂質を構成するイノシトールには脂肪肝を防ぐ働きがあります。コリンと一緒に摂取するとお互いに作用し効果的です。
関連リンク: ビタミンB12 | イノシトール
コリンの過剰症、欠乏症
水溶性ビタミンは、過剰に摂取された場合は尿中に排出されるため、一般に過剰症はみられず、水溶性ビタミン様物質であるコリンについても同様と考えられています。
しかし、高用量では発汗、体臭、胃腸障害、下痢、嘔吐などの副作用を生じやすくする可能性があります。
コリンは体内でアミノ酸のセリンから合成されるので、食事からタンパク質をきちんと摂っていれば不足しないと言われています。
しかし、偏った食生活によってコリンが欠乏するとコリンを含むリン脂質が合成されず、肝臓で作られた脂肪を肝臓外へ移送できなくなり脂肪肝を生じることがあります。
また、成長抑制、不妊症、高血圧、腎不全、記憶障害などが起こる可能性があります。
コリンの関連キーワード
レシチン
レシチンはリン脂質の一種で、脳神経や神経組織の構成成分です。食品中には卵黄や大豆に多く含まれます。
レシチンには水と油を結合させる乳化の作用があり、血管壁に付着したLDL(悪玉)コレステロールを溶かして動脈硬化や高血圧を予防する効果があります。
また、脳に多く存在し、情報伝達物質として記憶力や集中力を高め、認知症の予防に役立つと考えられています。